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文三・春蝶プレ襲名@横浜&米團治襲名@恵比寿

先週から今週にかけて2週連続で上方落語をたっぷりと堪能してまいりました。芝居もいいけれど、落語には落語の良さがあって・・・。

これだけお芝居を楽しんでいる分際で贅沢しているなとも思うのですが、まあ、別腹という便利な言葉もあることですし、まあご容赦いただくということで・・・。

☆2月8日 横浜にぎわい座第二十回上方落語会

「きん枝・春之輔二人会~つく枝改メ文三、春菜改メ春蝶プレ襲名公演~」とのこと。とはいっても披露口上があるわけでもなし、比較的普段着の会となりました。その分、噺家さんの持つ力がまっすぐと伝わってきたような気もします。

・開口一番 「いらちのあたごまいり」笑福亭瓶成

瓶成さん、久しぶりに高座を拝見しました。前回観た時より(1年くらい前かな)間違いなく腕を上げてはるような。細かい部分がとても丁寧に演じられていて・・・。まあ持ち時間より噺の尺がちょっと大きかったのか、場面の切り方に多少ぶっきらぼうなところがありましたが、最後の湯屋のシーンで壁を磨くところが実にうまい・・・。所作を丁寧にされているのと微妙な力の使い方からしっかりと壁が高座に現れていました。こういう芸の集約ってあるとき一気に実を大きくしそうな気がします。

・桂春菜 「ふぐ鍋」

春菜師匠のちょっとぼやきにちかい枕、味があります。自分の形になっているというか完成度の高さを感じて・・・。先代の春蝶師匠のCDなどを聴いていると独特の味があってそこから噺に取り込まれていくのですが、形は違っても同じようなリズムがしっかりと受け継がれているように思います。

語り口に艶があるのですが、それを前に出すというよりは高座に漂わせて場内を包む感じ・・・。噺のテンポをうまくコントロールしてメリハリをつけていくのですが、大きく噺を作っていくのでふぐへの恐れもじわっと強く客に伝わってくる。噺に聴きごたえを感じます。また、食べるまでにナチュラルなボリューム感があるから、一気にふぐ鍋を平らげるところの勢いがまた客を魅了するのです。ほんとうにおいしそうに思えて・・・。

なにか客の体までがほっくりとするようなふぐ鍋でした。

・桂春之輔 「まめだ」

観客を見定めるようにゆっくりと間合いを観ながら、明るくでも訥々と枕を振って・・・。

一旦間をおいて噺に入っていきます。「まめだ」は桂都んぼ師匠で聴いたことがあるのですが、そこには役者の繊細な部分が出ていて、まあぶっちゃけ泣かされたわけですよ。それに対して、春之輔師匠のものは、もっと太い線で役者が描かれていきます。それは今の洗練された役者の色と昔気質の役者の雰囲気の違いでもあるのでしょうけれど、噺の力点の置き方の違いでもあるような・・・。役者や母親の日々の感情をしっかりと表現していく都んぼ師匠の噺からは役者の心根の優しさみたいなものが伝わってくるし、そのあたりをちょっと伝法な感じでサクサクっと処理していく春之輔師匠の噺だと役者稼業の気の張った部分が伝わってくる。

そこが違うから結末の部分の印象もかなり違ってくるのです。都んぼ師匠から伝わってくる役者の心情のこまやかさが、春之輔師匠版では無常感のようなものに変わってやってくる。骨太なのですが命というものを俯瞰した悟りのようなものが春之輔師匠のさげの部分から感じられて・・・。

都んぼ師匠とは違う色の涙が流れたような気がします。しっとり仕上げられた都んぼバージョンとはちがうサクッとした感じに「まめだ」という噺の別の味を楽しむことができました。

(中入り)

・桂つく枝 「堪忍袋」

一時のまんまるとした感じから、しっかりと体重を落として、その分ちょっと精悍な雰囲気が出てきたつく枝師匠。噺にも陰影がくっきりとついてきたというかかパワーのかけ方に一層のベクトルがついてきたように思います。

「堪忍袋」なのですが、この噺は最初の勢いが勝負なのでしょうね・・・。いきなるスロットル全開で場を作る。そこをとりあえずは一回疾走する。しかもその走り方に乱れがあると後が続かなくなるような・・・。それは芸の安定感や噺家の資質すら問われる場面でもあるわけで・・・・。で、つく枝師匠が観客をうならせてくれるわけですよ。喧嘩のバワーとそれを止める緩急が抜群、語りの確かさが支えてくれているから夫婦のテンションが上がっても噺のフレームが崩れることがない。喧嘩の頂まで躊躇や切っ先が鈍る部分がない。

要所でのグルーブ感がすごくて・・・。で、喧嘩が一段落した後の夫婦の雰囲気の描写もいいんですよ。さらには頂に上がった後のさげ前の嫁姑がらみのところも思い切りのよいの進め方でつかんだ観客をだれさせない。嫁の叫び方など爽快感すらある・・・。聴いている方にたっぷりと厚さや充実感が降りてくる感じ・・・、グルーブ感を客席に与えられる噺家さんはやはり強いですよね・・・。

これは文三を襲名される師匠にとって間違いなく看板というか十八番のひとつになるような・・・。引出しがひとつやふたつではない噺家であることはよく承知しているのですが、こういう強弱でどんどんふくらましていくような噺にはつく枝師匠の芸風との特に強い相性の良さを感じるのです。

・桂きん枝 「孝行糖」

当然にきん枝師匠のお名前は凄く昔から知っているのですが、実際に高座を拝見するのは初めて。枕の部分、自分の過去を織り交ぜて観客を引っ張ろうとしますが、横浜はちょっとアウェイな感じでやりにくそう。若い方は師匠のあまり知らないのかもしれません。それでも、昔の芸人気質や芸の系譜のようなものを訥々とご説明いただいて・・・・。へえと思うようなうんちくもあって・・・。

やわらかい口調で流れるように語られる噺には、笑うというより聴き入るような感じ・・。この噺を聴くのは初めてですが、噺家が腕によりをかけることができる見せ場がいくつもあるような。そこをデフォルメせずにしらっと流していくのも力量かとは思うのですが、ちょっと淡白すぎるかなとも感じる。押すより引く感じで観客を噺に誘い入れていきます。気が付いたら客はきちんと噺に閉じ込められていて・・・。したたか・・・。

トリとして高座のボリューム感もしっかり作っていただいて、気持ちよく打ち出しの太鼓を聴くことができました。

☆2月12日 小米朝改メ桂米團治襲名記念落語界(恵比寿ガーデンホール)

恵比寿ガーデンホールでの米團治師匠襲名披露。3回公演。米朝一門に立川談春・柳家喬太郎・立川志の輔という人気絶頂の東の噺家をゲストに加えての落語会です。

・桂二乗 「牛ほめ」

こういうおめでたい会ですから、語り口の明るい噺家さんが一番に出てくると座が一気に暖まります。素直な語り口にも芯に勢いがあって客としても安心して噺に乗れる感じ。コンパクトにまとめている印象はありましたが、あほの表現に作り事ではない実存感があるのがよくて・・・。聴きほれてしまいました。

・桂団朝 「寄合酒」

二乗さんにしてもそうなのですが、米朝一門の噺というのは登場人物にリアリティがあります。デフォルメしたキャラクターであっても現実の息遣いを残してあるように思える。

「寄合酒」も持ち時間の関係か要所を見せるようなまとめ方でしたが、出てくる人物たちまでが端折られているわけではない。鯛の料理を任された男の犬との呼吸のようなものが実に見事・・・。その男が犬を見るときの表情と表現されていない犬の姿がちゃんと浮かんでくる。

そういう背景を作る力が団朝師匠にはあって・・・。上方落語の定番中の定番ではありますが、なにか新鮮さを感じる寄合酒でした。

・桂南光 「初天神」

枕ではゲストの談春師匠を配慮して、自らの襲名披露の際に先代の小さん師匠にまで口上をいただいたところ、そこに談志師匠が現れてひとの襲名披露そっちのけで大げんかになったというお話を・・・。

本編も時間の関係か飴玉の部分が割愛されて、なおかつみたらし団子の下りまでで噺を切られていましたが、逆にそのあたりにもこう米團治師匠にたっぷりという配慮がにじみ出ているようで・・。その心づかいも含めて十分楽しめました。

前のおっちゃんのところに夫婦の営みを話に行く下りだけでも十分におもろい。こう地力で押していくような話のトーンなのですが、語り方でおっちゃん側に立った視点にうまく制御をかけているので、下世話な話自体にすれすれのヴェールがかかっている感じになっていて・・・。えげつない話になりそうでならない・・・。

お客をちゃんと噺に浸らせておいて、聴き終わった後にあまり観客に余韻を残さない、その匙加減がなんとも絶妙に思えて・・・。さすがざこば師匠とともに今の米朝一門を支える大番頭、見事なものでした。

・立川談春 「天災」

個人的に、「天災」は小三治師匠のバージョンが一番印象に強いのですが、談春師匠のものも視点が微妙に変わっていておもしろかったです。こう、なんというか、八五郎側に若干寄り添ったような感じがする。そうすると、先生側の威厳がちょいと揺らいだりもするわけです。すっきりと攻守を分けたような小三治師匠に比べてすきっとしてはいないのですが、八五郎に実存感が生まれる。

好みはあると思うのです。正直言ってどちらが好きかといえば、私は小三治師匠の「天災」の方が好きかも知れません。でもね、談春師匠の八五郎の雰囲気っていうのはやっぱり魅力なわけで・・・。よりそこに居そうな気がする。

画素が上がった落語とでも言うのでしょうか。中入り中もその肌ざわりについてしばらく考えてしまいました。

中入り

・ごあいさつ

団朝師匠が仕切って、米朝・談春・南光の各師匠がご挨拶。南光師匠の国宝いじりがもうおかしくて・・・。談志師匠の不始末を詫びる談志師匠の表情も観ていてなんか笑えた・・・。

米朝師匠の訥々とした言葉に息子を思う情もよく伝わってきました。

・桂米團治 「七段目」

小米朝師匠の時の高座を拝見したのが2年以上前だと思います。その時には芸に生真面目さがあって技巧派という印象、でもそれか面白さをややそいでいる感じもありました。しかし、米團治師匠には技巧や芸の生真面目さが熟して精緻さへと変貌しているような・・・。

声を大きく張るとか所作を大きくするのではなく、空間を大きく作る感じ・・・。空気の密度を上げてその中で芸の大きさを広げていくような・・・。若旦那が2階に上がって一人遊びを始めるあたりから、師匠が大きく見えてくる。派手さはないけれど華がある・・・。

六方を踏んで息子が帰ってくる部分は割愛されていたけれど、そこですっきりした噺が後半の歌舞伎の部分の風通しをよくしているような。人形振りで階段を上がるあたりからぐいぐいと観客をひきつけていけるのもそこまでの道筋に無駄がないからかと。丁稚が加わってからの所作など、端正で熱がこもっているのが後方座席からでもはっきりとわかる・・・

今後、凄く大きな芸が観れそうな予感をしっかりと観客に与える高座で・・・、なにを今更というお叱りもおありでしょうが、自分の無知を恥じつつも、米團治師匠からなにか目が離せなくなりました。偉そうな物言いで恐縮ですが、客の私にとっても観にいってよかったなと思うような襲名披露でありました。

こうやって会を二つ重ねで見させていただくと、芝居も楽しいけれど落語もやめられない・・・。なにか、やっぱり凄い贅沢を続けているなあと・・・。今更ながら自覚していますです。反省はしてないけれど・・・。

はい。

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