「汝、隣人に声をかけよ~ドゲスバージョン~」、観ればみるほど・・・。
2月10日、7日に観た「汝、隣人に声をかけよ」をドゲスバージョンで再度観ました。R15という自主規制(?)付き。
たとえば、すごく良い絵が目に触れたとき、最初はその場に立ちすくんでただ眺めているのですが、その世界が自分の中に満ちると今度は絵のそばによってさらに絵の細部を観たくなるじゃないですか・・・。今回のお芝居にも同じように観る者を引き寄せる力があるのですよ。
前回の「動転」の時にも強く感じましたが、こまつみちる作劇には観客を取り込む魔力が潜んでいて・・・。
で、リピーター割引もあるとのことで会社帰りを王子小劇場へ急ぎました。場内は押し込まれない程度に満席。心地よいジャズが場内に流れ、わくわく感がゆっくりとやってきます。
(ここからネタばれがあります。R15というわけではありませんが、十分ご留意ください)
バージョンが変わってもお芝居全体の流れが特に変わったわけではありませんでした。どちらかというとディテールの表現に人間本来の姿が使われていたというニュアンス・・・・。芝居全体のトーンという意味では、ある種の透明感が若干だけ減じられて、その分キャラクターの実存感が増したような感じ。一瞬ドキッとする場面や噴き出すような場面もあって、お得感は間違いなくありました。
それより、再見して、このお芝居の秀逸さを改めて実感。シーンの積み上げ方といい、個々のシーンの表現の巧みさやそこから伝わってくるものの深さといい・・・、ほんと舌を巻きました。なんというか表現方法にためらいがない・・・。伝えるべきものが伝わるための力が手段を選ばずそれぞれのシーンにしっかりと込められて、そのシーンが次々と手をつないでいくような感じ。
最後にそれぞれのキャラクターが同時に異なる歌を絶唱するシーンにしても、そこに観客を導く前に男女が自転車に乗るシーンがあり、そのシーンの瑞々しさは男の親のところに女性が遊びにきたシーンに裏打ちされていて、女が遊びにきたシーンのインパクトはご近所付き合いの表現が前提にある・・・・。歌の部分は強烈なシーンですが、そのシーンだけの力でお客様を圧倒しているわけではないのです。すこしずつずれて立つドミノが倒れていくその強さとしなやかさこそが観客をぐいぐいと舞台に引っ張りこんでいきます。しかもこの作品、そういう導線が一本や二本ではなくて・・・。
おまけに積みあがるシーンの一つずつにきちんと魂があるというか・・・。大きく輪を作って表現されるシーンは二回目の観劇でもやはりぞくっとくるほど秀逸でしたが、それ以外の個々のシーンからも観客を満たすに十分すぎるほどの質量で伝わってくるものがてんこ盛りであるのです。
舞台にあるキャラクターの関係性が研ぎ澄まされた視点を内側に収めて次々とやってくる・・・。自転車のシーンの主婦と高校生の場面なんてもうそれだけでじわっとくるし、ゴミやしきのおやじと息子の微妙な雰囲気にしても、レーザー脱毛の相談をする女性とそれを受ける男性のトーンにしても、その他のどのシーンにも舞台を見つめれば見つめるだけ観客が惹きこまれる奥行きがある。一回目の観劇時はたくさん過ぎて無意識の領域で感じていたことが、二回目になるととても豊潤な表現として見えてきて・・・。、この舞台の懐の深さに改めて感嘆した事でした。
役者もやっぱり良いのですよ。こまつみちるの世界を演じうる力量を持った役者がちゃんと選ばれたのだなって・・・。舞台上での役もあって奥野亮子や森田祐吏、岩倉チヒロ、本井博之などが特に目を惹きますが、他の役者のお芝居にも舞台上に現れるキャラクターのさらに内側を感じさせる深さがあって、そのキャラクターに観客の関心が移ったとしてもまったく底が割れないだけの広がりを感じるのです。他の役者のお名前も前回の日記にに引き続けて再掲・・・。
東谷英人・末原拓馬・相馬加奈子・成川知也・横山真弓・平間美貴・こまつみちる・浦井大輔・川島潤哉
3度目の観劇はさすがに時間的に難しいのですが、それがとても残念に思えるようなこの作品・・・。まだ公演期間もあるとのことで(15日ソワレまで)、お芝居好きには是非にお勧めの一作です。
まずは、前回観劇の追記ということで・・・。
R-Club
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