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あひるなんちゃら「フェブリー」のありがたい薬効

掲載が遅くなりましたが、2月6日ソワレにてあひるなんちゃら「フェブリー」を観ました。場所はサンモールスタジオ。観客は満席。会場には、ちょっとポップな音楽がかかって、さいごに「あひるなんちゃら」と歌詞にはいっているところがいつもながらにご愛敬・・・。しかも今回はおしゃれだったりもして・・・。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意のうえお読みください)

作・演出 関村俊介

とあるフェリーに乗り合わせた人々の人間模様。いつものとおり素敵にぬるい会話が積みあがって船上の時間が過ぎていきます。

2等船室とデッキの二か所で演じられるシーンの数々・・・。ちょっとずれた会話が次第に膨らみになっていく・・・。不思議な設定がそのまま生きたり、ちょっとだけ意外性をもってつながったり・・・。

それは、いろんなタイプの人々のデフォルメでもあるとは思うのですよ。冒頭で出てくる二人の男から漂ってくる生活からの抜けださなさ、他の船客との距離。パディシエの奇妙なこだわり、パティシエの弟子の揺らぎ、バンドの追いかけの3人組の中のルール。それらがやわらかくこすれ合ったりぶつかったりするたびにこぼれおちるような何かがそこはかとなく観ている側につたわって・・・。で、ちょっと突き抜けた滑稽さとともに積もっていく・・・。

実はちょっと体調を壊して万全ではない状態で見に行ったのですが、別に誇張でもなんでもなく、芝居を見終わったらとても元気になってしまっていた・・・。演劇ヒーリング???なんてわけでもないのでしょうけれど。空気をやわらかく盛り上げてそれがしわっと観客を包み込むようなトーン、今更ながらですが他の劇団にはない感触で・・・。その空気のなかでの人間模様をもっと眺めていたくなるような・・・。ゆるい笑いに肌理のこまかさや質感を作り上げておいて、すました顔をしているところがまたよくて・・・。ここのお芝居には、ついついはまってしまうのです。

役者では追っかけ3人組にまず目がいってしまいました。その・・・、似合うんですよ、3人ともポップな追っかけ姿が・・・。金沢涼恵のかわゆさはもう拍手もの、ちょっと無知や無垢を装うような部分があって、でも鋭い動きがちゃんとついていて。なんというか演じるキャラクターのとんがった重さと軽さのバランスが抜群なのです。墨井鯨子はヘリコプターの新年会が初見でしたがイメージが全然違って、存在感がある・・・。黒岩三佳は派手めの衣装が奇異に見えないどころかナチュラルですらあって、一方でいじめられっ娘っぽい部分が(T_T)をだすのが絶妙におかしい。彼女たちの演技の繊細さがキャラクターのなかにきちんと生きておかしさをじんわりとひろげていて。不可思議な生真面目さがそれぞれのキャラクターからみえ隠れするのも良い。こういうものを無理なく演じる3人の力量はやっぱりすごい。

永山智啓の演技もとても秀逸・・。たまたま昨年の夏から比較的続けて彼の演技を観る機会に恵まれているのですが、この人は旨い。彼が舞台にいるとそれだけで舞台の輝度が増し密度が安定するような気がします。昨年の15minutes,MUや競泳水着などで見せた安定感が今回も顕在で、口癖で周りが勘違いするような部分にナチュラルな説得力がすっと生まれる。観客がそこに寄りかかっていけるのです。小野ゆたかの色の作り方も永山とは違った意味で旨いと思いました。色をぐいぐい押すような感じが舞台に歯ごたえをつくっていたような・・・・。

尾倉ケントは年末の北京蝶々の公演でもとても目鼻立ちのくっきりとした演技をみせていましたが、今回もその力が生きていました。表現しているのは結構ステレオタイプの葛藤なのですが、彼が演じるとそのありふれた感じが流れることなくちゃんと観客の側に残るのです。異儀田夏葉篠本美帆の卒業旅行組もその表層的な夢になんともいえない味があって、これもありがちでちょっと痛い感じの卒業旅行風景なのですが、よしんば亡霊であったとしてもその根にあるずぶとさというか人間臭さが絶妙で・・・。根津茂尚からふっと垣間見える繊細さや江見昭嘉が表現する小心さも、フェリーという世界の空気をさらに醸成させているような。

今回のあひるなんちゃら、いつもにもまして、役者たちの緻密なお芝居に脱力系の創意が映えていたように思います。個々のシーンはけっこうとげとげしたりもするのですが、終わってみれば極上の野菜スープをいただいたようなあったまり方があって。まさに薬効あらたか。

毎回見終わって思うのですが、この劇団にはまだまだ私の気付かない秘密というか隠し味がひそんでいるような・・・。

終わってすぐになんですが、次回の公演が今から楽しみになりました。

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