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コロブチカ「proof」ざらつきの秀逸さ

ちょっと遅くなりましたが2008年12月27日マチネにて、コロブチカ第一回公演、「Proof]を観ました。

コロブチカは柿喰う客のコロさんの立ち上げた企画ユニット。作:ディビット・オーバーン、訳:谷賢一。演出は黒澤世莉

休憩が入った2幕の芝居は見ごたえ十分・・・。たっぷり堪能してまいりました。

(ここからはネタばれがあります。十分にご留意の上お読みください)

。深夜、数学者の父親が亡くなった晩の幻想シーンから物語が始まります。乾いたタッチの父娘の会話に秘められたウェットな想いがいきなり観客を取り込みます。スムースでもなく感情のベクトルがはっきりしているわけでもない・・・。むしろ二人の関係が少しノイズというかざらつきのあるトーンで語られていきます。

そのトーンは、主人公キャサリンのいる空間に常に存在しています。数学者の父親ロバートの弟子であるハルとの絡みのなかでも、信頼と不信の間を揺れながらキャサリンの色がそこにある。それは姉クレアとの関係でも同じ・・・。

物語が進むうちに、キャサリンの精神的な飢えのようなものが次第に生々しく舞台に広がっていきます。それはキャサリンのぶっきらぼうとも思える仕草や自らを守ろうとする態度が強くなるごとに深くなっていく。自尊心や相手を思いやる心を傷つかないようにまわりと接することができない・・・。自らと同じ資質を持つ父への愛憎や自らと異なる色を持つ姉への想いが絡まり合いながら、キャサリンの抱えきれないようななにかが観客に積み重なっていく・・・。

キャサリン自らの才能が、結果的に信頼しかけていた相手へ開いた心を再び閉じさせる中盤部分、息を詰めるようにして見入ってしまいました。キャサリンが冒頭に作り上げたざらつきのようなものが、観ているものに中盤の彼女の想いをスルーさせてくれない。痛みと一言で表現しきれない複雑ななにかがあちらこちらから観る者の心を浸潤していく・・・。

その高まりが、終盤の彼女の選択に説得力を与えます。再び心を開く彼女のナチュラルでちょっとだけ好奇心にハイになっている雰囲気に、すっと縛られていたものがほどけていく感じ・・・。終幕の暗転の中で、彼女が抱えていたであろうもの、才能というもの、さまざまなコンテンツがすっと俯瞰されて・・・、もう一度彼女の想いが深く強く観る者に戻ってくるのです。

黒澤演出にひたすら瞠目・・・。

出演は、鈴木浩司(ロバート=父)、コロ(キャサリン)、小谷真一(ハル)、こいけけいこ(クレア)。

鈴木浩司が演じる父からは崩れていく部分と崩れない想いがしっかりと伝わってきました。奥にある彼の想いが強弱をランダムにつけながら現れてくる感じ。そこから現れるいびつな感じにものすごい説得力があるのです。

ハルを演じた小谷真一は、キャラクターが持つ適度な実直さとある種の硬質な内側をしっかりと表現していました。ステレオタイプな良い人ではないところが舞台全体を深くしていたように思います。

姉のクレアを演じたクレアはキャサリンとの精神的シェイプの違いをパワーをうまくコントロールしながら演じていたように思います。金融アナリストという職業の匂いをあからさまにならないように表現していく・・・。見栄えをうまく利用しつつ、自らに与えられた才能への自負と数学の深遠さに入り込めない諦観をさらっと織り交ぜたその演技からは、キャサリンと異質な世界が浮かび上がってきます。他の演者同様にいびつというか凹凸のある表現が姉妹のつながりをやわらかく引き出してもいました。

キャサリンを演じたコロは主人公の抱えるものを見事に背負い切りました。舞台上で両足を踏ん張ってキャラクターが支えるものを一緒になって支えた感じ・・・。流れるような器用な演技ではなかったと思います。舞台のざらざら感は彼女が自らの内側のリズムで演じたことによるある種のバラツキから来ているのかも・・・。でもそのバラツキがないと、おそらくキャラクターの心のうちにある殻のようなものを観客は理解できなかったような気がします。伝わってくるキャサリンの内心のみずみずしさにコロの演ずる意志が生み出した何かを超越するような熱のようなものを感じた事でした。

訳の谷賢一が紡ぐ言葉のナチュラルさもよかったです。台詞のひとつずつにやわらかいニュアンスがあって・・・。役者の想いを乗せる言葉がちゃんと広がりを持っている感じ・・・。

もう、大満足の年の瀬観劇でございました。

R-Club

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