謹賀新年、で「新年工場見学会09~少女のニセモノ~」
遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
ちょっと観劇の順番は変わりますが、まずは新年ということでアトリエヘリコプターでの「新年工場見学会09」の感想などを・・・。こういうおせちみたいな番組って個人的に結構だいすきだったりします。
人身事故で山手線がストップしてしまいちょっとびっくり。開演が10分遅れに・・・。でもスタッフの対応が明確で状況の説明も丁寧にしていただいて新年からとても好感触。
(ここからネタバレがあります。十分にご留意の上お読みくださいませ)
オムニバスのように4つの出し物、途中休憩をはさんでの2時間半。その間を3人の男優の逃げ場を失ったような会話でつないで・・・。
*むらさき☆こんぷれっくす
パンフレットに「役落として的にこういう芝居をしておくことで、考えすぎた芝居を作らないように自分を戒めるしだいです」と書かれていた前田司郎氏、その目的は十分すぎるほど達成されたかも・・・。
「少女漫画のニセモノをします」ということで、その意図がけっこう生真面目に貫かれている・・・・。骨格は素敵なご都合主義でちゃんと作られているのです。そこにいろんなスタイルの役者の演技が絡むのがいちいちおかしくて・・・。最初からニセモノトーンで器用に物語を演じていく役者、ナチュラルな演技で微妙なリアリティを醸し出す役者、ふっと素を見せる役者・・・。戸惑う役者・・・それらがごった煮になって少女漫画の嘘っぽさや猥雑さがずるずると続いていきます。
クレジットは以下のとおり
作・演出・出演: 前田司郎
出演: 大山雄二・木引優子・内田慈・菊川朝子・高井大介・黒田大輔・安部健太郎・椎橋彩那・立蔵葉子・坊薗初奈・佐藤沙恵・齊藤庸介・中川幸子・西田麻耶・兵藤公美
まあ、台詞があやしかったり、役者の緊張が切れたりというような部分もあったりしましたが、そのあたりがかえってお正月気分を作り出していて・・・。災い転じてというか、確信犯なのかといぶかったりもして・・・。おかしさはあっても不快な感じがまったくしなかったのは、よしんばぐだぐだな部分があってもそれぞれの役者の素の力がきちんとにじみ出ていたからと・・・。
そんななか、内田慈や坊薗初奈の演技の強さというか太さはやっぱりすごい。木引優子の自然な表現も目を引きました。菊川朝子の素の部分にも不思議な魅力があって・・・。高井大介の飄々としたところ、黒田大輔の押しの強さも目を引きました。大山雄二もひとつまちがえば豆腐のようになりかねない舞台をうまく支え切ったと思います。
なんというか、死語ではありますが「へたうま」の芝居をみせていただいたような・・・。どこかでいかんいかんと思いつつ、なにか妙に満足してしまいました。
*ザ・ノーバディーズ(ライブ)
ゆるげなサウンドなのですが、マイクなしで作り上げていくその手作り的な音には強くひきつけられました。パーカッションやピアニカがものすごくしたたかで効果的。それをベースとギターがしっかりと支えます。肥田知浩のボーカルにはのびやかさと心地よさがあって・・・。歌詞にもメロディーラインにもすっと心をひかれる。
しいて言えば「たま」のサウンドが一番近いですかねぇ・・・。ただ、他とは比較できないような個性がこのグループにはあって・・・。一発でファンになってしまいました。
鍵盤 : 宮部純子
太鼓 : 浅井”わっしょい”浩介
ギター : 犬飼”ハウス”勝哉
ベース : 肥田知浩
合わせて演じられたダンスも切れがあって観ていて眼福、すっと音楽を抜けだすような動きにグルーブ感があって瞠目した事でした。(ごめんなさい。ダンサーの方のお名前がわかりません)
~休息10分~
ホットワインがふるまわれました。スパイシーでとても美味しゅうございました
*紅牛会
日本舞踊と獅子舞のコラボレーション。手作り風楽器が後方でサポートします。
日本舞踊の足さばき、観ていてほれぼれしてしまいました。華やかさのなかにすがすがしさがあって・・・。別に悩ましい脱力感をもったMC(?)たちに影響されたわけでなく日本人に生まれてよかったと思ってしまいました。
しかも、そこに登場する獅子舞の手作り獅子頭が・・・、一転してすごくうそっぽいのですがなんかよいのですよ・・・。お世辞でもなんでもなく、観ているほうがおもわずにこっとしてしまう。ウィットというか暖かさがある獅子頭でありました。獅子舞もここ一番の動きがしっかりと抑えられていてなおかつ遊び心もあって・・・。、お正月にも丑年にも通じたよい出し物だったと思います
演者 :内田慈・榎戸源胤・中川幸子・西田麻耶・兵藤公美
奏者 :安部健太郎・佐藤沙恵・佐藤貴子・坊薗初奈
*チャゲ&飛鳥のニセモノ
前半チャゲ&飛鳥の成り立ち部分があってそのスピード感にまず引き込まれます。でも見せ場は後半の新チャゲオーディションの場面・・・。チャゲという概念がすっと独り立ちしてそこに虚実すれすれのようないろんな個人的なカムアウトが絡んでいく・・・。さらにはオーディションを受けているもの通しの対立があったり・・・。
チャゲの数値化や価値観の独歩に懐の深さがあって一気にはまってしまいました。一人ずつの発言には丁寧な奥行きが作られていて、そのなかから、「チャゲ」という概念がしっかりと醸成されていく・・・。役者たちがキャラクターの心の動きを真摯に演じきっていて、気がつけば舞台にちゃんと質量が生まれていて、ここまでくるとお正月のお遊びというよりきわめて上質なコメディに接しているような。しかも物語の収束にも無理がなく、ウィットすら感じさせる。さりげなく岩井秀人の才を見せつけられたような・・・、ほんとうに恐るべしです。
作・演出 : 岩井秀人
出演 : 中島美紀・平原テツ・墨井鯨子・上田遥・師岡広明・坂口辰平
役者はほとんど初見ですが、上田遥には目をひかれました、ちょっと硬質な部分を持った芝居なのですが、舞台全体を強引に染め変えるような力が彼女にはあって・・・。強烈な個性を感じるのですが、オーディションの雰囲気にもすっと入り込めるような柔らかさもある。
坂口辰平の演技のタイミングのよさも舞台をうまく膨らませていました。墨井鯨子の醸し出す雰囲気もうまいなと思った。中島美紀の絶妙な力加減も絶妙で・・、平山テツや師岡広明も舞台上での絶妙なバランスをうまくコントロールしていたと思います。
*新年工房見学会
終演後、六尺堂を見学。木工工場を思わせるその場所からはなんと年間200程度の舞台美術が生まれているのだそうです。実際に作りかけの大道具も展示されていて、柱の後ろ側の空洞部分に舞台の嘘とその嘘から生まれる真実に勝る想像の力を思って・・・。
昨年六尺堂がかかわったという作品のリストを観てまたびっくり・・・。良いなと思った舞台の多くが含まれていて・・・。
ほぼ毎週のように舞台を見続けているとその贅沢さを忘れてしまうのですが、殺風景とも思える天井の高い雑然としたこの場所から、さまざまな人々の才能が組み合わさって作りだされる舞台空間の秀逸さを思い出して、一観客がこういうことを言うのもおこがましいのですが、なにか舞台の作り手側の方々への敬意を新たにしたことでした。
終わってみれば外はもう暗い・・・。
友人との新年会に向かう道すがら、世間はいろいろと大変だけれど、今年もなにか良いものをたくさん観ることができそうな・・・、そんな予感に満たされた事でした。
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