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ろりえ「キミは癌」のわくわくする混沌

2008年12月13日、ろりえ「キミは癌」を観ました。場所は早稲田大学の学生会館、B203教室。けっこうタフで興味深い舞台でありました。

(ここからネタバレがあります。十分にご留意ください)

冒頭のダンスが突き抜けています。いきなりフルスロットルで走り出す感じ。女性たちのバワーが観客を一気に引きずっていきます。独特のリズムが観客を凌駕していく。ステージが華奢にみえる。繰り返しがどんどん押し寄せてくる。リプトンが耳に残る・・・。まずこの部分が非常に秀逸でした。

しかし、そこからのドラマは不思議に落ち着いたトーンのなかで立ち上がっていきます。断片的に映像で示される情報。最初は理解しがたかった舞台上のルールが次第にまとまっていく。まるでカタログのようなさまざまなタイプの女性たちがお父さんとよばれる男性とすごす「平和」と銘打たれた静かな時間の流れ。一方で奴隷と呼ばれる男たちの存在もあって・・・。ちょっと不可思議な共同生活。その空間に、男女が共にすごすありふれた世界のデフォルメされた姿がふっと浮かびあがってくるような・・・。千石イエスを彷彿とさせる部分もあるのですが、それだけではない。依存と制圧、所有と非所有、独占と共有・・・。作者によってデフォルメされたさまざまな要素・・・。それらの均衡が静寂を生んでいるような。でも、「平和・終わり」という状態に陥って均衡が崩れた時・・・、混乱が世界を支配するのです。混乱には苦悶がある・・・。苦悶の時間は収束しそうでしない・・・。

で、混乱の極みから舞台はまわって(本当に回ってびっくり)なんとお風呂へと・・・。

正直いって物語を追いかけるのはむずかしかったです。でも、カオスに至るような舞台から不思議につたわってくるものがある・・・。なにか抜けられないような感覚や癒し、それらが観ているものにとってのどこかに共鳴しているのです。

それよりなにより、舞台上の刹那ごとにあるものが、観ていてわくわくするほどおもしろい。間違いなく惹きつけられている・・・。作者が意図した表現すべきものが混沌の中にしっかりと感じられる・・・。

役者もそれぞれに勢いがありました。

梅舟惟永、斎藤加奈子、志水衿子、徳橋みのり、岡田あがさ、清水穂奈美、谷若菜、本山歩、岡野康弘、横山翔一、松原一郎、高木健、奥山雄太

岡田あがさ以外は初見。岡田あがささん、今回も気持ちがよいほどに切れておりました。他の役者もびっくりするほど力があった・・・。登場人物たちのかかえるものが舞台上で個々にちゃんと見えていました。混乱の中でも演技が安定していて、それぞれのシーンに色がちゃんとついていく・・・。

言葉の範囲で表現できない魅力がこの劇団にはあるのですよ・・・。

そう・・・、多分・・・・、この劇団、次回も観ると思います。

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