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KERAMAP「あれから」ふわっと包む

12月23日 KERA MAP「あれから」を観ました。作・演出ともケラリーノ・サンドロヴィッチ

場所は世田谷パブリックシアター、意外なことに1階席にも空席が・・・。まあ、これまでのケラマップと比べるとお高くはなっているし、ナイロン本公演と比較して外部の役者の比率が圧倒的に高いし・・・。何よりもこういうご時世だし・・・。

でも、それって本当にもったいない気がするのです。まさに出色の舞台でしたから・・・。

(ここからネタばれがあります。十分にご留意くださいませ)

物語はふた組の夫婦を軸に展開していきます。妻同士が同級生。同じ先生にあこがれていたふたりがケーキ屋さんで出会うところから物語が始まり、その夫たち、子供達、さらには、夫婦それぞれの浮気相手が絡み合って・・・。そして、今のエピソードに差しはさまれるように妻同士たちの学生時代、先生や同級生たちのその後などが描かれていく中でケラ風の肌触りを持った時間が浮かび上がってきます。

その風合いがものすごくよいのです。最初のシーンとて主人公の一人がケーキ屋で他人の子供の頭をひっぱたいて騒ぎになるなかでのもう一人の主人公との何十年振りかの再開だし、童話の翻訳をしている彼女の仕事場のとなりは壁が薄くて音が筒抜けのカウンセリングルームだったり・・・。さらには、夫たちの職業もどこか嘘っぽいところがあって・・・。でも、それってけっこうこの時代を生きた人間にとっては現実的だったりする。実直なようでどこか不純でポップな部分がある生活の積み重ね・・・。現実感がなくても現実離れをしてはいない微妙な設定。小粋な誇張、妙にリアルな心のスケッチ・・・。それらの醸し出す時間の軽さが観客のいる場所にすっとフィットする感じ・・・。

学生時代の描写も秀逸で、どこかいい加減で赤面するような未熟さや若さと、将来への純粋な希望のようなものが笑いのなかでしっかりと観客に伝わってきます。ケラ流のちょっと痛さを含んだ笑いが主人公たちの学生時代の想いを一層生き生きと感じさせて・・・。最後に明かされる学生時代の親友がその後疎遠になる理由もあっさりとしていて、でも人生の曲折を端的にあらわしているようで、ウィット豊かな表現にすっとガードを下げた観客の心がチクっと染みる。

最後には二つの夫婦が絡まり合った形で物語が収束していきます。心離れていた二つの夫婦のおさまりどころが、なんだかなぁと思いつつもいとおしいくらいにほほえましい・・・。それをハッピーエンドと呼ぶかはかなり微妙なのですが、でもそこにある今と学生時代の「あれから」の間に横たわる時間が、ふっとやさしい重さで観客に舞い降りて、不思議に満ち足りた気持ちがそのあとに訪れるのです。高橋克実がかんだ鼻水を見せようとしたとき嫌がるでもなく、さらっと受け流す高橋ひとみの淡々とした仕草には溜息がでるほど・・・。そこに時間がある・・・。渡辺いっけいの神経質さと余貴美子のちょっと天然な部分も最後に温かく噛み合って・・・。支離滅裂というかカタストロフが醸し出す殺伐感が極まったその先で、なにか心が暖まる居場所が現出するのです。

まあ、それにつけても豪華な出演者・・・、「これでKERA MAPかい?」って突っ込みを入れたくなるほど・・・。

余貴美子、高橋ひとみ、萩原聖人、岩佐真悠子、江本佑、金井勇太、赤堀雅秋、村上大樹、三上真史、植木夏十、山西惇、渡辺いっけい、高橋克実

中でも余貴美子の演技の厚さには、もう惚れぼれ・・・・。それに負けない他の役者たちの味わいにもいまさらながらに瞠目・・・。植木夏十が見るたびによい役者になっていく・・・。

偶然なのかもしれませんが、三谷幸喜の「グッドナイト・スリープタイト」も夫婦の30年間を描く作品・・・。ふたつを比較してみるとけっこう面白い。愛情を持ち、正直で、どこかで真摯にお互いを思いやりながら、振り子の振幅が少しずつ大きくなってやがて振り切れたように別れていく「グット・・」の夫婦、一方どこかで夢を捨てきれず、ごまかし、自分に甘く正直になり、やがては若い男女にうつつをぬかし、お互いに心が離れながらも、結局は振り子が戻って何事もなかったように暮しはじめる「それから」の夫婦達・・・それぞれが色をつける長い時間、やわらかく確実に浮かんでくるところは一緒なのですが、味わえば味わうほどに肌ざわりが違っていて・・・・。メランコリーなオプティミストのケラさんとハイテンションなペシミストの三谷さん、それぞれの個性なのでしょうね・・・。

世間は大変な年の暮ですが、こういう芝居を見ると、来年がかなり楽しみになるのです。

帰り道、寒さもさほど気にならず・・・。そんな暖かさを持ったお芝居でありました。

ケラさん、来年はどんな芝居をみせてくれるのでしょうね・・・。

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