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三遊亭白鳥「生みたて卵独演会」、借りる力と理詰めの破壊力

11月10日、なかの芸能小劇場にて、三遊亭白鳥「生みたて卵独演会」を観てまいりました。ほんの少し雨空の午後、場内は落語好きの方でほぼ満席というかんじ。

そんななか、ホームグラウンドでの白鳥師匠を、たっぷりと楽しんでまいりました。

(ここからは新作落語のネタバレがたっぷりとあります。十分ご留意の上お読みくださませ)

サッチモっぽいミュージカルのスタンダードが場内の雰囲気をやわらかくして・・・。出囃子の代わりに「東京ブギウギ」のバリエーションがかかる趣向。おなじ「東京ブギウギ」がかかるのではなく今様にアレンジされたバージョン、笠置シヅ子の正統派バージョン、そして「上海ブギウギ」と使い分けているところがなかなか細かい心配り・・・。

前座もスケもなくひとり3席、パワフルな高座の連続に舌を巻きました。

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・野ざらし

思いついて練習もしていないという前ふりがあっての「野ざらし」。ネタおろしといえばそうなのでしょうけれど、、むしろフリージャズの雰囲気を持たせて話し込んでいくところが、聴いていて実に心地よい。古典からの改築は手慣れたもの、サイサイ節を否定して、釣りを途中で投げ捨てて・・・、さりげなく振っておいたご隠居のさらに一軒となりのおじいさんを大活躍させる・・・。

語り口がくっきりしているので、噺が多少脱線しても観客が本線を見失うことがない・・・。

この噺、関西では「骨釣り」ですよね・・・。そちらを最初に聴いていて、その後「野ざらし」を知ったのですが、そのさらに進化系を聴いたような・・・。伏線をさらに増やしたり、グルーブ感をもたせたりで、聴く方は結構新作を聴くようにわくわくしました。師匠自身が枕で触れていたように、この噺の持つ柔軟さをうまくとりこんで、破綻なくまとめ上げる・・・。それはみごとなものでした。

・ギロチン初めて物語(お題は確実ではないです)

清水宏氏が原作との前置き・・・。清水宏氏って、昔山の手事情社にいた??梶井基次郎の弁論大会風「檸檬」を演じきった??帰ってYahooで調べたら、どうやらそうみたい・・・。最近はナイロン100℃への客演などという側面を維持しながらネタっぽい舞台も多々こなしていらっしゃるそうなので、別に不自然ではないのですが・・・。芝居好きからするとちょっとびっくり。

で、噺といえば、古典の借景を織り込んでいくのですが、これがおもしろすぎる・・・・。フランスの噺を座布団のうえでするのが、そもそもすごいのですが。その流れで登場のアップルパイ屋という無理を押し通しておいて、時そばのさわりを組み入れて、さらに初天神の団子屋にどっぷりと漬ける・・・。おんぶにだっこの借景が気持ちよいほど突き抜ける・・・。

たとえば柳家喬太郎師匠なども、こういう入れものをしらっとやってのけることは多々あるのですが、どちらかというと、路地の奥に手招きをされて、こそっと見せられる感じ。それにくらべて、白鳥師匠のそれには堂々と店のショウウインドウに飾り立てて売りさばくようなすごさがある・・・。古典の語り口がしっかりしているからこそ成り立つ絶品の芸に、手を叩いて笑いこけてしまいました

・新作(ねたおろし)

すみません。お題がわからなかったです。

白鳥師匠、人情話をやってみたいとのことで・・・。その時点で場内からはなぜか笑いが・・・。いやぁ、白鳥師匠に「文七元結」なんぞをやっていただいたら、さぞかしいい味だと思うのですけれどねぇ・・・。素というか、噺をまっすぐに演じていただけたら、それは骨太で力のある人情噺を聞かせていただけると思うのです。でも、師匠の高座を何度か拝見していると、まともには終わらないかもしれないなあと思う・・・。白鳥師匠はそれだけの方ではない。きっと噺にその上の世界がある・・・。むしろまともにしっかりと聞かせていただいたら、それはそれで残念感をかんじてしまう。そう思うのは私だけではないようで・・・・。で、場内に笑いがやってくる。

噺が横道にそれましたが、この新作は・・、人情噺とはちょっと違うと思います。人情噺風といったところでしょうか。滑稽話に人情噺のエキスを振りかけたという感じ・・・。

よくできた噺ではあるのすよ・・・。特に伏線の張り方。前半の伏線の張り方に強引さがなくて、それが後半にことごとく生きていく見事さには何度も唸らされてしまいました。理詰めでしっかりと噺を進めてくるので、奇想天外な話の成り行きも全然気にならない・・・。むしろここまで作り込んでもらわなくても大丈夫だよと、声をかけたくなってしまうほど。仕掛けの多彩さ、それも一つずつがすっきりとよくできているだけに、かえって噺のふくらみが小さくなってしまったのではと感じるほどでした。

まあ、今回はネタおろしですからね・・・。、今後語り方の工夫があると、仕掛けの数や質がさらなるパワーに結びついて、噺全体のふくらみの起爆装置になっていくような。

ちなみに不発弾についた青カビの話がが出てきたあたりで、人情噺は吹っ飛んでしまったような気がします。人情話にするならば、子供を救うところに主人公達が持つもっと深い根が必要かと・・・。とはいうものの、この噺、良い部分がてんこ盛りだけに、人情噺へのこだわりも今後どう化けていくか、すごく楽しみに思えたことでした。

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白鳥師匠の高座、着実な表現力と地力を再確認。次回の生みたて卵の会、いつかは存じませんが、ちょっと外せない感じです。

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