「花のお江戸に出没!ラクゴリラ 13」 はとまどうほどのおいしさ
9月28日、お江戸日本橋亭で、第13回「花のお江戸に出没ラクゴリラ」を観てまいりました。今年は夏にも臨時のラクゴリラがあったので3回目・・・、たっぷりと上方落語の世界にひたることができました。
・開口一番 「大安売り」桂 三四郎
ともすれば平板になりやすいネタに、しっかりとした起伏をつけて噺を観客に聴かせてくれました。枕にしても、しなやかさの片りんがあって・・・。才能をしっかりと感じる・・・。
ただ、いろんなところに少しずつ雑さがあるのですよ。初日からの黒星の積み重ねにしても、流れはよいのですが話がぐっと上がっていかない。
細かい所作にもうすこし神経がいきとどけば大化けするなにかがあるような気がするのですが・・・。たとえばメクリを丁寧にめくるとか・・・。
・林家 花丸 「寄合酒」
花丸師匠の高座には明るさがあります。まあ、犬が盗んだ鯛を取り上げたり、子供だまして鰹節をせしめたりと、結構えげつない噺なのですが、花丸師匠がやるとなにか罪がない・・・。悪さをしても何か許せるような包容力があるのです。
後半のゆっくりとたたみかけるような噺の持っていき方、明快でわかりやすく面白い・・・。
昔から知っていた噺なのですが、花丸師匠がやると一味違う感じがして・・・。たっぷり味わうことができました。
・桂 こごろう 「貧乏神」
悪い意味ではなく、こころう師匠の雰囲気に合った噺かと思います。その貧乏神の情けなさが、こごろう師匠だとちょっと愛嬌に変わるような感じで・・・。これも師匠の人徳(?)かと・・・。貧乏神になんともいえない実存感があって、この世のものではない設定であることをわすれてしまうような・・・。こごろう師匠の噺には、そういう錯覚をさせるほど、何気に貧乏神が存在している。
ただ、貧乏神のいじめ方はもっと強くてもよいような・・・。とりついた人間に世話を焼くほどに立場が逆転して・・・、そこを耐えて、許して、でも耐えきれない一線があって別れにつながるという感じがちょっと弱かったようなきがします。まあ、好みの問題かもしれませんが・・・。
中入り
・桂 つく枝 「みかん屋」
夏の大銀座落語祭のときより一層ダイエットされたようで、すっきりした感じ。論理的に説明された7000KCalのお話が、現在のすっとした感じを一層引き立てて。
で、語り口もやわらかくすっとした「みかん屋」、雪隠の話が出ても厭味がない。汚いものを綺麗に見せる手練を身に付けられたような・・・。お手本を見せるほうがみかんを積んだしぐさに良いみかんとわるいみかんがちゃんと見えるところが芸のたくみな部分・・・。そこをあほがやると微妙にぎこちなくなる。そのなりようがすごくよいのですよ・・・。いろんな雰囲気をしっかりと込めておいてわざとらしさがない。観客も力をすっと抜いてみることができるような感じ・・・。
こういう末端まで神経が届いている芸を見せてもらえると、師匠の文三襲名もさもありなんと思います。
・笑福亭 生喬 「蛸芝居」
なんというか、芸が大きい。豪胆な感じがする「蛸芝居」を見せてもらったような・・・。この噺は桂吉坊さんのものも見せていただいたことがあって、彼の場合は動作が精緻な感じ。それに対して生喬師匠のものはダイナミックさが魅力で、ぐっと見栄を切るところの力強さに、観客はぐぐっと押される感じすらあるほど・・・。下座との呼吸にも安心感があって、芝居話の良さがまっすぐにやってくる。
力まずにすうっと高座全体の雰囲気を上げていって、ここぞというところで一気に力を入れるような感じ。そのメリハリが客を引きよせ、引き寄せられた客の熱を凌駕するような波が、また必ずやってくる。
その満ち引きにとてもひかれたりするのです。
*************************************************
いやあ、面白かったですよ。各師匠の高座にちゃんと色があって、しかも指の先にまでびしっと心が通っているような高座が続いて・・・。
出演者の方が東京の観客を大切におもっていただいてるのが凄く伝わってくるのですよ。ひとつずつの高座がしっかりと練り上げられていて、落語をそんなに知らん観客でもぐいっと惹かれる魅力があるし、多分うん十年と落語を聴きつづけたような耳の肥えてる方にも高い評価をもらえるような高座なのだと思うのです。
ただ、観客というのはわがままなもので・・・。、まあ、贅沢な希望でもあるのですが・・・。この会、4人のゴリラの会なのですからもうすこし野性味を持ってもよいのではないでしょうか。なにか良すぎる・・・。
4人のメンバーそれぞれが名人上手といわれる域に足を入れられつつあることは疑いのない事実なのですが、でも、そこで止まらないのも名人の資質、次にはさらにこんな花が咲くという部分や、あかんかったらごめんなさいみたいな取り組みが、完成度の高いものと混ざってあってもよいような気がするのです。もしかしたら関西のラクゴリラはもっとチャレンジングで、その良いところを東京に持ってきていただいてるのかもしれませんが・・・。
もちろん東京の会でネタおろしをしろなんて無茶を言うつもりは毛頭ありませんが、でも、なにかそれぞれの噺が洗練されすぎているというか、きれいすぎるような感じがするのです。発展途上のネタを披露していただいたり、たとえば「すべて食べ物の噺」みたいな企画を組んでいただいたりなんていうのも見てみたい気がします。
何回も言いますけれど、大満足ではあったのですけれどね・・・。ここまで見せていただいて贅沢な話ではあるのですが・・・。
ふっと思った事でした。
PS:今回、三味線(謡?)もなにかすごくよかった・・・。演者とあっているというか、しなやかに生きていたような気がしました。良い高座がよいはめものを引き出すのか、よいはめものに高座が映えるのか・・・。パンフのクレジットには三味線・吉崎律子さんとお名前がありましたが、上方落語ならではの相乗効果がことさら魅力的に感じたことでした。層がしっかりと広がる噺家さんに加えてこういう方も上方落語界の隠れた財産なのですね・・・。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント