« 王子落語会納涼寄席 都んぼ師匠の切れで暑気払い | トップページ | アロッタファジャイナ「ルドンの黙示」に秘められた真理の重さ »

庭劇団ペニノ 「星影のJr.(ジュニア)」に見る作者の不思議な自己肯定

8月17日マチネにて、庭劇団ペニノ「星影のJr.」を観ました。前回の「苛々する大人の絵本」も主宰のタニノクロウの世界観がとても印象深かったのですが、今回は別の意味で作者の内面が見事にスケッチされた作品となりました。

(ここからネタバレがあります。十分にご留意の上お読みくださいませ)

スーツを身につけた男女の姿から物語が始まります。教育者を連想させる姿、互いに小声で話しながら、何かを始める準備をしているよう・・・。そこに一人の子供がやってきます。そして、物語が始まります。

時間割のように区切られていくシーン、 1限目・社会の時間「大人とふれ合おう」、2限目・家庭科の時間「食べ物を大切にしよう」、3限目・体育の時間「心と体をきたえよう」、4限目・道徳の時間「自由な心を持とう」(正確ではない・・・)。

胡瓜やナスを育てる気持ち、両親のどこか気まずい関係、父親の仕事を手伝っている人のこと、その中で何かをしたいと思う心、彼だけに見える妖精のようなもの・・・。食事中にテレビを見たい気持ち・・・。母親が買物で留守にしている時にやってくる屋根裏に住むおばあさん・・・。

ちょっとレトロな感じの普通の家庭に子供の想像力が加わったような風景。。

でも、それが時限を追うごとに少しずつ崩壊していきます。

2限目の終わりあたりから明らかに父親の歯車が狂い始めて、イメージが混濁し現実と想像が交差し始めて・・・

母親の欲望が父親を縛っている光景、逆に父親が母親を犬に変えて浮気をしていること、えさや水をやっての犬との意志の疎通、母親をないがしろにする父親に対する水鉄砲での攻撃・・・。

父親が連れ込んだ女性とのこと。愛情の欠けた家庭。父親によって育てたキュウリやナスは荒らされて・・・。そんな中での花火・・・花火の思い出、父親と母親の顔も花火に照らされて、線香花火を見つめる家族の時間があって・・・。父親が心を奪われた女性の半裸の姿への攻撃があって。

4限目が終わって、いくつもの思い出がヘタウマな絵で表示されます。そこにあるのは、ありふれた子供の思い出の風景・・・。4つのシーンで語られた幾つものエピソードが次々に現れて。

そして最後のシーン。舞台上には天に伸びながら花をいっぱいつけた樹が舞台の中央に現れます。再び正装で現れる登場人物たち。現れた子供はその真ん中に自分の武器を置きます。ほとんどの登場人物たちがゆっくりと舞台を去る中、。ただひとり残ってそれを見つめる父親がいて・・・。瞬間、時間のベクトルが逆転して、父親がは記憶の中での様々な出来事が咲かせた花をゆっくりと眺めているようにも思えます。

先回の「苛々する大人の絵本」のときにも同じようなことを感じたのですが、タニノクロウには自らの内面に浮かんだ風景をあからさまにスケッチするような表現力があって、よしんば、それが通常の感覚からはデフォルメされたものであっても、生々しさというかみずみずしさが非常に強く観る者の心を浸潤していきます。

教条的な教えも理想論もなければ、目を覆うような現実を隠すこともない・・・。見て、思い、感じて、記憶していくこと、それらは育ち、色とりどりに咲いていく・・・。

記憶を重ねているようにも、記憶を遡っているようにも思える感覚の中で、作者が描き上げた、成長していく時間の感覚がやわらかく舞い降りてくるのです。

出演者は以下のとおり

久保井研・飯田一期・五十嵐操・熊谷美香・ラヴェルヌ拓海・瀬口タエコ・矢島健・タニノクロウ・ マメ山田

タニノクロウの内なるものを描写する力に今回も瞠目させられて・・・。次回公演は来年の2月だそうだけれど、今からとても楽しみです。

R-Club

|

« 王子落語会納涼寄席 都んぼ師匠の切れで暑気払い | トップページ | アロッタファジャイナ「ルドンの黙示」に秘められた真理の重さ »

コメント

留意するの?

投稿: BlogPetのr-rabi(ららびー) | 2008/08/23 09:33

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 庭劇団ペニノ 「星影のJr.(ジュニア)」に見る作者の不思議な自己肯定:

« 王子落語会納涼寄席 都んぼ師匠の切れで暑気払い | トップページ | アロッタファジャイナ「ルドンの黙示」に秘められた真理の重さ »