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15 Minutes Madeのおいしい駅弁感

8月30日ソワレにて、6つのユニットが15分の時間でお芝居をする・・・まるでお弁当のおかずをちょこちょこつまむようなPerformance(?)を池袋シアターグリーンに見に行ってまいりました。Mrs.fictionの企画は今回が4回目だそうですが、私は初見・・・。

スタイリッシュでカラフルな舞台上に展開するさまざまな物語、15分という枠が物語のエッセンスをギュッと絞り出して、素敵なエンターティメントを堪能することができました。

(ここからはネタばれがあります。十分にご留意の上お読みくださいませ)

きびきびした客入れ、前説などもあり・・・。けっこう退屈をしないままで開演を迎えます。

1.横浜未来演劇人シアター 「市電うどん」

「ハマのメリーさん」と呼ばれていた横浜の街娼の物語。冥府への旅立ちの時を舞踏的な手法を取り入れながら表現していきます。

導入の部分の死の香りには、死の汚れを感じるのですが、持ち物の中にあった市電の切符から彼女の魂が大きく舞台に広がっていきます。

横浜市電の駅をつないでいく言いたてから、彼女が暮らしていた横浜の街が見事に現れる・・・。人数をかけてのフォーメーションに街が浮かんでいく。彼女を通り過ぎて行った人々の面影とともに、時間の長さがすっと溶けるよう。やがてロープを使って作られた線路が客席を滑走路のようにして点まで伸びるとき、何かが昇華していく・・・。

弟との関係、彼女の歩んだ道、それらがすべて凝縮されたような一杯の素うどんを食べ終えた彼女が市電に乗り込む時、彼女の時間がすっと観客の心に預けられたような・・・。

わずか15分の時間がとても長く、でもあっという間に感じられたことでした。

構成・演出:寺十吾  振付・出演:石丸だいこ

出演:今井勝法・岡野正一・櫻井麻樹・柴崎知花子・中野麻衣・中山朋文・浜田貴也・松浦玉恵・望月大成・安田亞希子・吉村公佑・若松絵里・雪港・水元汽色・日与津十子

2.青春事情 「クロヒゲ」

爆弾を前にした4人の男のドタバタ劇。15分の時間がそのまま爆弾の爆発予定時刻のような設定になっていて、物語が進むにつれて緊張感が高まっていく仕組みになっています。

4人の妙な一体感がスパイスになっていて、逃れられるすべがありながらうまくいかないところにおかしさが膨らんでいきます。

モンティパイソンなどに出てきそうな、価値観の転換がそこはかとなく機能している感じ。その場の行動の歪め方が直球勝負なので、最初はえっと思うのですが15分の後半、次第に彼らの世界に浸っていくにしたがっておもしろさが次第に積まれていく・。なんというか押し切るパワーみたいなものが役者にあるので、観ていてもまあまあ飽きがこないのです。

最後はお約束に近い落とし方でしたが、観客をそらさない15分でした。

作・演出:青春事情

出演:大野ユウジ・加賀美秀明・小門真也・本折智史

3.elePHANTMoon 「小説の形」

15分の間に、静かな演劇が見事なスプラッターホラーに変身していきました。

前半の少しずつ狂気が含まれていく感じが絶妙。物語に狂気がすうっと流れこんでくる感じ。岡田あがさの視線が狂気をじわりじわりと舞台に誘い込んでいるようにも思えて、目が離せなくなってしまう。永山智啓にも潜んだ狂気があって、二つの狂気がナチュラルな会話のなかで絡んでいく・・・。

そこから一気にはじけるような後半、、物語の様相は大きく変わっていきます。なにかがポンと飛んで、それまでの探り合うような距離感が一気に箍を外して、舞台は様相を一変させます。女は椅子に男を縛りつけてその腹を切り裂く。岡田あがさの表情がまた良いのですよ。何かに憑かれたようなどこか緩慢なしぐさに、だれにも止められないようなまっすぐな意思が感じられて・・・。

小腸を引き出してもてあそぶあたりから、何かを突き抜けた時のユーモラスな雰囲気が浮かんでくる。縄跳びを始めるところまでは想定内だったのですが、クロス跳びにはやられました。それまでは仮想世界というか、ガラスケースの中の世界のようにながめていた物語が、血しぶきを防ぐためにレインコートを着てもっさもっさ小腸でクロス跳びをする姿を眺めた瞬間に、妙に現実っぽくなってしまう。その落差というかズレが、不思議におかしくて、そのおかしさが今度は概念を離れた生々しい恐怖を導いてくるのです。

エンディングの礼までしっかりとドラマのうちに収めて・・・。

岡田あがさの演技は、これまでも空間ゼリーの舞台を中心に観てきましたが、舞台ごとに本当にいろんな可能性を感じます。15分間の血まみれ芝居の中に、彼女のコールディ・ホーンばりのコメディエンヌとしてのたぐいまれなる才能を観て、彼女の才能の多彩さを感じた事でした。

脚本・演出 マキタカズオミ

出演:永山智啓・岡田あがさ

休息(中入り)

4.あひるなんちゃら「ゴーデンノーベ」

あひるなんちゃらのテーマのさわりの部分が流れると、そこは彼らの世界。そもそも、あひるなんちゃらの役者が誰も出ないところが彼ららしいのですが、それでもあひるなんちゃらの世界がしっかりと構築されていきます。

金沢涼恵の妙な神経質さと上田楓子の鷹揚さの対比が良い意味でゆるく笑える・・・・。安定した演技が醸し出す二人のキャラクターにずるずると引き込まれていく感じ・・・。そして煮詰まりかけたところに現れる中野佳奈がその可笑しさにしっかりと輪をかけてくれる。

上田楓子の気風のよさから、趣味が相撲観戦というのはすごくナチュラルなのですが、そこから彼女のために二人が相撲をとるという展開にたどりつくのが理屈抜きにおかしくて・・・。

仲が良いという話と、劇団を作るという話をしっかり分けるところがちゃんとスパイスになって小気味よく物語のリズムが作られて・・・。

三人の女優の手練と関村俊介の才能を再確認させられた小品でありました。

脚本・演出:関村俊介

出演:金沢涼恵・上田楓子・中野架奈

5.アイサツ「クレイジー」

初見の劇団なのですが、一番カラッと笑いました。劇団の稽古場、優柔不断な演出とそれを責める助手、さらに自分のペースで動く役者たち・・・。同じルーティンがどんどん膨らんでいくというパターンなのですが、スムーズに稽古が流れない・・・。どんどんペースが崩れていくなかでさらにさらに輪をかけたシチュエーションがやってくる・・・。

で、どうしようもなくなって、稽古場が大混乱のなかで、演出は気持ちよく歌ってしまうのです。このシュールさがたまらない。そこまでの道程がとてもしたたかで・・・。

こういうことができるのってセンスだと思うのですよ。寒い内輪の茶番劇になるか、おかしさがどんどん膨らんで突き抜けていくか、紙一重の世界だと思うのですが、そこをしたたかに切り抜けていくセンスが舞台から漂ってくる感じ・・・。

派手さはないけれど、なにか引き付けられる物が埋もれている・・・。この劇団、なんか気になります。

作・演出:尾倉ケント

出演:坂口辰平・長野海・山本美緒・師岡広明・斉藤加奈子・江尻雅輝・三井翔太

6.ねじ式(未来篇)

近未来の前提が積み重ねられていく中で、物語が展開していきます。人間的なのですが妙に役に立たないロボットと、そのロボットを拾った解体屋の兄弟の話。

人間らしいともいえるロボットの人間らしさや生活との軋轢から、日々の生活にかかわるいろんな感情がにじみ出てくる・・・。

3人芝居の淡々とした会話の中に、ある種のペーソスが生まれていきます。

15分の枠のなかに、兄弟の日常の雰囲気がうまく詰め込まれていて、物語の設定を含めてうまいなと思います。挿入されるエピソードのようなものにも、心を惹かれる・・・。たとえば文鎮になりたいというロボット役の深川深雪の台詞がよくて、そこから物語に深さが生まれる・・・。

派手さはないけれど、佳作だと思います。

原案・出演:夏見隆太 作:中嶋康太 演出:生駒英徳

出演:岡野康弘・黒川深雪

6本の作品、それぞれに味わいがあっておもしろかったです。

まあ、長編の作品を作るのと、こういう作品を作り上げていくのって使う筋肉が違うのかもしれませんが、でも、短い作品ならではの創意工夫も随所に見られて・・・。

来年の春には次回のスケジュールも決まっているということで、また機会があれば見に行きたいなと思った事でした。

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