喬太郎伝説と大銀座落語祭2
本当に、頭に高座が出来るのではないかと思うほど、週末は落語三昧でした。銀座だけではなく、三軒茶屋まで足を伸ばす始末・・・。年甲斐もなくというか、無節操というか・・・。でも、本当に楽しかったです。
(ここからネタの中身に触れるような記述があります。ご留意の上お読みください)
・7月19日喬太郎伝説(柳家喬太郎独演会)@世田谷パブリックシアター
いま、一番脂が乗っている噺家の一人だと思うのですよ・・・。その話術といい、噺の切れといい、はじけ方といい・・・。
まあ、大銀座のチケットが取れているんだからわざわざ世田谷くんだりまで足を伸ばさなくてもと、一時は思ったのですが、「双蝶々」という噺をかけるとのことでがんばってチケット取り、三軒茶屋まで足を伸ばしてしまいました。
☆柳亭左龍 「お菊の皿」
くっきりした語り口で、なんというかわかりやすい。妙な気取りがなく、でも相応に腰のある「お菊の皿」となりました。江戸前と上方風では笑わせるポイントがかなり違う・・・。上方落語になれているとちょっと乗りにくいような部分もありましたが、でも飽きのこない噺の進め方だったと思います。
☆柳家喬太郎 「純情日記(渋谷偏)」
枕が秀逸で・・・。ホームグラウンドの余裕というか手のひらに話しっぷりが場内を盛り上げて、それがまた師匠自身のテンションをあげていく・・・・。師匠からすると、枕からしっかりと客を掴みきっているし、逆からみると思いっきり師匠に乗せられている感じ。
本編も、良い意味で危うい感じがあって素直に楽しめました。主人公の感情のばらけかたがときどき観客と不整合を起こすような場面があって、何かが残る。しかしそれがリアリティに変わっていくところが師匠のすごいところ・・・。苦味をもって噺が本来もつ味を際立たせていくのです。たまに苦味が強すぎるところもありましたが、まあ、そういうばりがないと噺がきれいに流れすぎるのかもしれません。しっかりと茹で上げた後冷水にさっと通すようなオチも秀逸。観客の心にとりちらかった噺のエキスがすっとまとめられてしまいました。
☆林家正楽 「紙きり」
これは間違いなく至芸です。
軽妙な舞台と客席の掛け合い、OHPに図柄が映し出されたときの驚き、作品の風情、ボストン美術館にそのまま飾ってあってもおかしくないような・・・。
上半身を動かしながら切っていく姿もちゃんと芸の算段に入っていて・・・。
時間があっという間でした
☆柳家喬太郎 「双蝶々(通し)」
厚みというかボリューム感を持ちながら、一方で人間の抗えない本質がすっと観客を包み込むような一席でした。生い立ちが見事に浮き立つ導入部分から、ぞくっとするような人間の暗部が垣間見える中盤の番頭殺し、そして丁稚殺し・・・。一つずつのシーンが細かい画質で描かれていきます。殺される丁稚の描写、長吉を信じている姿から、自らが殺されることを悟ったときの心の動きまでが手に取るように伝わってきます。殺す長吉に一瞬のためらいが浮かんで見えたのは錯覚でしょうか。
子別れの場面、息が詰まるような時間、淡々とした語り口がずっしりと積もっていく・・・。父親が羽織を渡してやる気持ち、見守る母親の心情、そしていとまごいをしてひとり雪の町に出た長吉の思い。ぶれがまったくない喬太郎師匠の空間の刻み方に、親子の心の重なりが舞台からダイレクトに伝わってくる・・・。
真夏の7月19日なのに、肌に冷え切った空気を感じるのは、決して冷房のせいではない・・・。その凍てつき透きとおった夜の吾妻橋、捕り方の提灯が凜と鮮やかに浮かぶ・・・。気がつけば、喬太郎師匠の芸に観客は、人の性が運ぶ顛末を俯瞰する場所へ導かれていて・・・。そして喬太郎師匠の打出しと共に景色だけがそのまま残る・・。
劇場をでても外の暑さがしばらくわからないほど、取り込まれてしまいました。
・7月19日大銀座落語祭 映画と新作落語の会@時事通信ホール
林家しん平監督の映画、残念ながら最初から観ることはできませんでした。でも、途中から観ていてもなにか懐かしかった・・・。昔の匂いがする日本映画という感じ・・・。
別に落語ファンでなくても、鑑賞に十分堪える出来だったと思います。
さて、2部は新作落語会、5人の個性派がそれぞれの色を鮮やかに出して見せました。
☆月亭遊方 「絶叫ドライブ」
びっくりするような特徴はないのですが、なにか聴いていると続きを聞きたくなるような・・・。デフォルメされているようで、実はそんなのあるなぁ・・・みたいな感じがする。不思議な親近感があるのです。高座と客席の感覚が近い落語というか、聴いていてもたれないというか。でも、肝はしっかりとつかんでいるし笑いがちゃんとくる。力みを感じないよい高座でした。
☆林家しん平 「お題不詳」
仮面ライダーをはじめ昔のヒーローたちのその後を面白おかしく語っていきます。ヒーロー専門のハローワークっていうのも笑いました。微妙な哀愁がよいスパイスになっていて、噺の味わいを深めていきます。
噺もよく出来ていて、ここ一番のポイントがちゃんと作ってあって・・・。よい出来だったと思います。入り
☆福笑亭福笑 「脂肪遊戯」
良くいえば、福笑師匠の高座のシニカルな一面が強く出ていて・・・。まあ、悪く言えばうスプラッター落語ともいわれかねないネタ・・・。非常に突き抜けたブラックな笑いを呼び込んでいました。単純に肝臓や腎臓を引き出して見せて趣味の悪い笑いを誘っているわけではない。その先には安易に脂肪を抜くことで美しさを得ようとする女性のあざとさを笑う福笑師匠の冷徹な目があります。小腸を振り回す描写など尋常な笑いではありませんが、そういう紙一重の表現でジャンクすることなくで高座を保つだけの絶妙のバランス感覚が福笑師匠にはあって・・・。その、すごさに目を閉じてしまうか見開いてしまうかは観客しだい・・・。
まあ、好みは分かれるでしょうねぇ・・・。事実、終演後満座が沸騰するような感じではなかったです。
ただ、ここまで突き抜けないと表現できないものが間違いなく存在する・・・。禁断の毒の甘さとでも申しましょうか・・・。個人的には、非常に魅力的な狂気を感じることができましたし、ライブでしか接することができない噺だとは思いますし、噂にはきいていた話ですので聞けてラッキーだったと思っております。、
中入り
☆桂あやめ 「私はおじさんにならない」
あやめ師匠は女流の落語家さんの草分け的な存在、すごく昔聴いたときには女放談(吾妻ひな子師匠がやられていたような)に物語という線路を付けたような印象があったのですが、今回の円熟ぶりには瞠目しました。無理やり女性が男性の領域で落語をしてはったような昔と違って、落語のなかに女性が演じるよさが緻密に織り込まれている感じ。
ねたも良く練られていて、なおかつ洗練されている・・・・。
畳み掛けるような噺のもっていき方には、ノリとつややかさがあって、笑いが波状攻撃のようにやってきます。しっかりとコントロールされた噺も持っていき方に、観客は安心して身をゆだねられる・・・。
女流落語として一つのジャンルをしっかりと作りながら、一方で男女落語表現均等法に準拠して、芸の品質に女性だからという部分を払拭もしている。中堅落語家としての貫禄も加わって、豪胆な中に緻密さがある秀逸な噺に観客はころっと取り込まれて・・・。
いやあ、ファンになりました。
☆林家彦いち 「お題不詳」
テレビ出演の関係で、福笑師匠やあやめ師匠に気を使いながらトリ・・・。
実直な中に力があるし金とは逝かないながらも銅のような輝きもある・・・・。SWAのときにも思ったのですが、筋力がしたたかに潜んだ噺をなさる・・・。その筋力があるから多少無理な設定もまっすぐに押し切ることができる・・・。観客をぐっと捕らえる彦いちワールドというものが間違いなくあります。
怪談部というサークルの話、部員に怪談を考えろといってもろくなものが出てこない。その中で本当の妖怪が現れるのですが、サークルの指導教官は妖怪へのダメだしをはじめる・・・。ある種のパワーがかかったトーンのなかでは、妖怪へのダメだしという無茶がじつにすっきりといくのです。すっきり笑ってのお開きは見事な限り・・・。
バランスが取れたなかなか良い番組構成の新作落語会、たっぷり楽しませていただきました。
しかし、流石に3日間で4つの会はちょっとオーバーワーク・・・。でも、落語づけの日々まだまだ続くのです。
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