アロッタファジャイナGolden WeeeeK ラフの魅力がいっぱい・・。
4月27日、アロッタファジャイナ番外公演、ラフプレイ第一弾{Golden Weeeek}を千秋楽に観てきました。アールデコでのアロッタファジャイナ番外公演も今回が3回目、今回はコメディを中心とした構成だそうで・・・。芝居のクオリティも運営もどんどんレベルがあがっているのが、観客としてもなんかうれしく、たっぷりと楽しめる2時間となりました。今回は3つのお芝居の連続上演です。
(ここからネタばれがあります。十分にご留意ください)
第一話 藤澤組 「みつ子の魂、あくまで」
落語でいうと、開口一番のお芝居。テンポと勢いがありました。起承転結のけじめがちゃんとしているから観ているほうにストレスがないし、思考を表す表現や、役者の間の取り方も観客側に立っているというか観客のテンションにちゃんとあっていて・・・。本当に口当たりがよくて。
物語もシーンごとに良く練られています、青木ナナの芝居にはある種の実直さがあって芝居に内包されたものを着実に機能させる・・、それに呼応して物語が観客側に積みあがっていくのです。大石綾子の芝居もたぶん番外公演を3回観た中で1番出来がよかったと思います。男優達も押しだすバランスというか、力の使い方がとても秀逸。能ある鷹からときどき爪が出てくる感じ・…。
全うに作りこまれた手作りのお芝居なのだと思います。、こういう舞台って、よい肌触りでちゃんと観客に届くのですよね。佳品だと思います。
第二話 松枝組 「ゴールデンウィークにお芝居を」
ベースに使われた岸田國士の「屋上庭園」はNylon100℃の「犬を鎖につなぐべからず」でもしっかり取り上げられてた作品。現代にも十分通用する骨組みをもっているし、潤色をしたときに鮮やかな色を出せる作品だという知識はありました。・・・・が、それを演ずる役者のバターンを変えて人間関係を表現していくやり方には舌を巻きました。なんか、演劇の本質を垣間見た気がしたし、同時にみごとに仕組まれた極上のコメディとしても成立していたと思います。
ただ、その先の展開には若干凡庸な部分もありました。ストーリー展開に多少もたつきがあったり、物語としてもっと整理できるかなという部分を感じたり・・・。笑いを取りにいっている部分でも、くすぐりが機能するために必要な物語の骨格についてなんとなく強度が足りなかったり。40分を通じての極上のコメディとはなかなか行かなかったようです。
笑いの取り方については作・演出の松枝氏にためらいが会ったのかもしれませんが、パンチラインにあたる部分をもっと大胆に提示しないと観るほうに倍のためらいが生まれてしまいます。さらにいえば小道具の使い方、キスシーンの重さのつけかた等々も、物語とのバランスがやや崩れている感じ・・・。それがために最後のシーンが100%観客の心を掴むようには機能していなかったような・・・。
でも、それをカバーして余りあるほど、役者は本当によかった。
安川結花の演技への入り方、表情が表す事象の広さ・・。今回もたっぷりと破壊力がありました。他の役者も自分の演技力を手のひらにのせて不自由さのない芝居が出来ている感じ・・・。役者が自分のキャラクターや美しさを見せるすべをちゃんと心得ていて、コントロールしている。舞台のパーツとしての演技から自分を見せる演技への切替がとてもなめらかで、舞台のメリハリがすごくしっかりとしていて・…。だから、多少よどんだ展開の部分であっても、舞台上での役者がしっかりと生きて見えるのです。
番外公演を重ねるごとに、女優陣の力が明らかに増している感じ・・・。イケ面である男優たちも演技の確かさで観客をしっかり捕らえている。
まあ、作品的にさらによくなる要素がいっぱいある気はしましたが、すごく引き込まれて観ていたのも事実なわけで・・・、終演時、気が付けばけっこう幸せな気分になっておりました。
第三話 新津組 「罪悪感から出た軽い会釈」
コントとしては実に良質、3つの短編からなるオムニバスのような感じでしたが、どれも笑いの質が高かったです。1話目が、完成度的には一番高かったような気がしますが、他の2つの作品にも捨てがたい魅力がありました。詳しい内容は読んでいただいても、面白さは伝わらないので書きませんが・・・。観た人用に私の感想などを…。
1話目の物語の広げ方にはわくわくしました。ほんと、どんどん観客の興味をひきつけていく。観客に強いるのではなく、観客自身をまえがかりにして、うまく展開を期待させていました。落ちも抜群のセンスだったと思います。
2話目のつちのこフェチVS名前書きフェチ夫婦は何も考えずに笑えました。図解の部分をもっと作りこんでゆっくりと丁寧にやればさらに笑いが膨らんだようにも感じましたが、ベタさにちょっと一味加えたような、でもわかりやすい設定とそれを押し切る力は相当なもので、観客は安心して乗っかることができたようにおもいます。
3話目の家族、なにか行き場のない部分にもけっこう惹かれました。ある種の下ネタなのですけれど、設定をとことん貫き、手抜きをしないことで良質な笑いを生んでいたと思います。
モンティ・パイソンなんかを観るたびに思うのですが、上品であろうが下ネタであろうがインモラルなネタであろうが、最初の設定に観客を捕らえるだけのインパクトがあり、その拘束力が観客の期待を凌駕して続いている限り、観客の良質な笑いはどんどん育っていくような…。新津組の3人にはそのあたりのつぼを掴む手練がそなわっているように感じました。
役者も安定していましたね…。石走理子が本当によくて・・・。間がよくて、確実な演技ができて、演技の線がしっかりと太い。観ていて安心感がありました。男優陣も、タイミングのコントロールが抜群で、うまく舞台を流し、なおかつ要点をしっかり押さえていく感じ・・・。
このチームの舞台、もったいないくらいあっという間に時間が過ぎていきました。もっと観たいって真剣に思った。
でも、よい試みだと思うのですよ。このような舞台って作り手の基礎体力を確実に上げるのだろうし、観客にとっても能天気に観ていてひたすらたのしいし・・・。いすが多少狭くても、見えにくいシーンがあったとしても、それを含めて役者の演じるという作業の手作り感がつたわってくるのがすごく良いのです。
なんか、その日の仕入れを生かした、メニューに載っていない板長のお勧め料理をいただいたよう。すごく贅沢なものを観たような気がして、ほくほくしながらの帰り道でありました。
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