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しっとりと猥雑に楽しくて瑞々しい・・・ 康本雅子「チビルダ ミチルダ」 

3月14日、アサヒ・アートスクエアで康本雅子「チビルダミチルダ」を観てきました。かなり強い雨が降りしきる中地下鉄の浅草駅から吾妻橋を渡って・・・。ちょっと憂鬱な気分で開場を待ったのですが、スタッフの対応がしっかりとしていて会場も居心地がなんかもよくて・・・。さすが会場の親会社がアサヒだけあって、ビールのワンドリンクサービスまであって。ちょっと気分回復。

で、公演が始まると外の雨なんて完全に飛んでしまって・・・。すばらしいダンスパフォーマンスに完全にはまり込んでしまいました。

(ここからネタバレがあります。十分にご留意いただきますようお願いいたします)

客電が消えないままで、おもちゃの動物を引きながら現れる康本雅子、すーーっと彼女の世界に導かれる感じ・・・。そして、照明が落ちて、カンパニーが現れるとあとはもう、彼女の世界に一気に持っていかれます。

まずビビッド、綺麗なユニゾンの美しさを感じる部分とふっとバラける部分が絶妙なリズムになっていて、心が共鳴して行く感じ・・・。動きに切れがあるのですが、すべてがしゃきしゃきと動くのではなく、拍子の間にちょっとだけオーバラップするような、動きが残るというか伸びのようなものが伝わってくる部分があって、それが全体のイメージをとてもなめらかにしている。群舞の生真面目な動きだけでなくソロや対での踊りにも伸びやかな動きができるダンサーぞろいで、康本雅子の踊りのティストをやわらかく支える感じ。明るいシーン、ソリッドな場面、リズムに乗って、あるときは一息の何分の一かずらして趣の深いオブジェが観客のイメージの中に構築されていくなかで、一瞬抜けるような闇を感じたり、肩の力がすっと抜けるようなぬくもりが柔らかくやってきたり。

そして、ソロになったときの康本雅子のしなやかさ、観ているものの心までをすぅーーと広げるような風が客席に吹き込む。たとえば子供が好奇心のままに動いていくような、一方で感情を包み込むように取り込んでいくような・・・。抜群の切れが高い密度でやわらかい動線を描き出す。指の先にまで過不足のない力が伝わってさらにそれが会場全体まで染めていくよう。艶やかな熱を発しながら踊るパートがふっと切れてクールな熱(形容矛盾だけれど)が彼女を包む瞬間、ぞくっと私の肌が粟立つ。やや重めの質量が軽やかに動く姿には観客を凌駕するパワーが内包されていて、観客はその力に酔いながら彼女の描く世界に漬け込まれていきます。

一方で、創意に満ちた振り付けは、時に下世話であり、粋であり、コミカルです。あからさまな示唆と内に浸潤するような動きは、時に、観客に微笑すら運んできてくれます。そうかとおもえば、カンパニーのさまざまなバリエーションの動き、声、歌、断片的な言葉のようなもの・・・。それらが観客の開かれた心の中で色にまで昇華していきます。声の先に高まりがあり、高まりが満ちた先に更なる動きがある。シームレスに訪れる感覚に観ているものは感覚がはちきれるほどに広がっていくように思える・・・。さまざまな表現が猫の目のようにやってきて、しかも観客にはとまどいや違和感がまったく感じられない。

しかも俯瞰してみれば、一連のパフォーマンスは30歳前後の女性の人生の体現でもあるような・・・。幼いころから思春期の感性、心の中の2面性、大人の女性としての熱情と失望のようなもの、楽しいこと、落ち込むこと、そして艶かしいこと・・・終幕に提示される、女性としての感性のヒストリーが、次のジェネレーションへとつながれていくような回帰の暗示に、思わず感嘆の吐息がこぼれてしまうのです。

でも、・・・・、ここまで読んでいただいておいて申し訳ないのですが、こんな記述では、彼女のパフォーマンスを表現するのにあまりにも足りないような気もします。

なによりも、彼女の舞台を見て心から思ったこと。観ていて楽しい。理屈ではなく楽しい。重なるいくつかのステップに私の好奇心がのどを鳴らし、音楽を踏み越える彼女のリズムが私の心を酔わせ、舞台上の表現の広がりが私の心の拘束具を弾き飛ばしていくれる。わっと喜んで、時々きゅんとして・・・。その楽しさ。

そう、「感じた楽しさの表現」こそが彼女の作り上げた時間を表現するに一番適したものなのかもしれません。

今回の康本雅子パフォーマンス、ほんと、観て楽しく観ることができてうれしかったです。何度も書くけど「すごく楽しかった」です

なお、今回のクレジット等は以下のとおり

作り手: 康本雅子

演じ手: 新鋪美佳・佐藤亮介・関本麻須美・羽太結子・吉村和顕・康本雅子

クレジットの最後に「禁じ手:奈良ちゃん」とあります・・・。禁じ手???

ここだけ意味がわかりません。誰か知っていたら教えてくださいな。

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