« 南光・こごろう親子会 脂がのってまんなぁ・・・ | トップページ | 画面の向こうでも関係ねぇ・・・・、NHKのファインプレー »

空間ゼリーLABO 「私の部屋」佐藤けいこ一人芝居・・・そのコアの質量がもたらすもの 

3月3日、空間ゼリーLABO 佐藤けいこ一人芝居「私の部屋」を観てきました。前回の岡田あがさ一人芝居につづくシリーズ、場所も同じ王子、「pit 北/区域」。佐藤けいこは作・出演となります。

狭いというか密閉されたイメージの空間、正面の座席にたどり着くには舞台をすこし踏まなければならなくて、神聖な場所を踏むようで抵抗があって・・・。で、お手伝いにこられていた空間ゼリーの女優の方に促されて爪先立ちで舞台を越えて・・・。前回も同じ方に同じようにご案内をいただいたことを思い出して・・・。

しかし、当たり前の話ですが、舞台に立つ女優が魅せた彼女自身は、前回とはまったく違ったテイストのものでした。

(ここからネタバレがあります。ご留意ください)

舞台は雑然とした女性の部屋・・・。一面に散らかされた服、舞台の端に鏡台・・・。そこに現れた着ぐるみ二つ、彼女の部屋の中央でかるくハグすると舞台の両端に座って・・・、芝居が始まります。

最初は演じようとする感じが先に立っていました。体の動きが台詞から浮くような印象があって・・・。それは自分の部屋で自らの思いを言葉に出す不自然さにとまどっているようにも思えて・・・。

しかし、着ぐるみに話しかけるような部分あたりから潮目が変わります。そこまでの彼女は本当の彼女を包み込むパッケージのよう・・・。彼女の言葉や仕草が、すっと拘束が外れたようにナチュラルに変わっていく・・・。

とはいってもすぐに彼女のコアが現れるわけではありません。まるでバウムクーヘンのように層になった彼女の感情や想いがすこしずつ剥がされていく感じ・・・。それも綺麗にベロっと剥がれるわけではなく、彼女のコアのなかに潜む理性のようなもので感情がまだらに剥ぎ取られていくような・・・。

ペットとの出会い、彼との別れ・・・、洋服や美顔器のこと・・・。前からやってくることと、後ろ向きに見えるいくつかの気づき・・・。時には主観的に、あるいは不器用と思えるほどの自らへの素直さで語られて・・・そんな中でふっと見えてくる彼女自身、「これが彼女」と決して鮮やかに提示されるわけでもなく、彼女の本質が綺麗に整理されているわけけでもない・・・、

でも、さらに潮目が変わったとき、曖昧で日和見な感じさえある思いの羅列の先に、しっかりとした質量を持った彼女の本質が現れてくるのです。そこには彼女を見つめる彼女がいる・・・。彼女がかかわった時間をしっかりと認識する彼女がいる・・・。その彼女から発する瑞々しさ・・・。質量と瑞々しさという、相反するようなイメージの重なりのなかで、舞台上の彼女に立体感をもったコアが生まれて・・・、

その姿が日付とともにカメラに刻まれて、そして彼女のコアを隠すようないつもの彼女の感情が再び戻って・・・・。

50分弱の舞台、これまでの公演で観た彼女はとても器用さをもった役者というイメージだったのですが、正直言って今回の彼女にはスマートではない部分も多かったと思います。でも彼女の舞台上でのテンションがその不器用さを良いほうに転がした・・・。不器用さを押し切るテンションがあったから、終盤語られる彼女の感覚、髪、洋服、排泄物・・・やってくるものとなくなっていくものへの彼女の想いが、流れたり埋もれたりすることなく観客の心を捉えたような気がします。

観おわってアンケートを書く中で、私もとても後を引くトリガーをもらったように思えたことでした。

それにしても・・・、前回の岡田あがさにしても今回の佐藤けいこにしてもそうですが、内側にしっかりとした力を秘めた女優の存在と、その力をしっかりと引き出す演出家(深寅芥)の力量には瞠目するばかり。主宰兼作家(坪田文)の才能にも目を奪われますが、空間ゼリーの舞台がもつ吸引力は他の女優陣も含めてそれらの総合力の証でもあるのでしょうね・・・、。まあ、只者達ではない。

次回の空間ゼリーの公演は4月9日-13日(@赤坂レッドシアター)だそうですが、これも超わくわくものかも・・・。今日から前売り開始ということで、終演後の特設チケット売り場には列ができていたことでした。

R-Club

|

« 南光・こごろう親子会 脂がのってまんなぁ・・・ | トップページ | 画面の向こうでも関係ねぇ・・・・、NHKのファインプレー »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 空間ゼリーLABO 「私の部屋」佐藤けいこ一人芝居・・・そのコアの質量がもたらすもの :

« 南光・こごろう親子会 脂がのってまんなぁ・・・ | トップページ | 画面の向こうでも関係ねぇ・・・・、NHKのファインプレー »