SWA 羽目をはずすも4人4色
13日、SWA「ブレンドストーリー2」を観てまいりました。SWAの構成メンバー、林家彦いち(背番号1)三遊亭白鳥(背番号2)春風亭昇太(背番号4)柳家喬太郎(背番号6)、赤地に3本線の今体育風のとばにもびっくりしましたが、そのまったりしたオープニングもなんか独特の雰囲気で・・・・。しかし、あとでわかったのですが、このまったりしたオープニングには、それぞれの噺の伏線がテンコ盛り・・・。本編までの時間つぶしとあだなおろそかに聴いていてはいけないものでした。今回は自分の小学校が廃校になるという基本設定のもとでそれぞれの創作落語がくりひろげられるのですが、最初の部分が共同の枕のようなものなのですね・・・。
(ネタばれとは言わないかもしれませんが、一応新作落語の内容が含まれますのでご留意ください)、
・春風亭昇太師匠
よくできた噺というか、正統派・・・・。老若男女すべてがきちんと理解できるし、小学生にもちゃんと聞かせることができるお話です。この噺がトップバッターだというのは、噺に基準になりうる品格があるということなのでしょうね。仕込がしっかりとしていて、それらが背筋をしっかり伸ばした語り口の中でひとつづつ実を結んでいく感じ・・・。噺の最初に仕込んだロングパスにその場のショートパスが見事にからんで、次第に観客を取り込んでいく・・・。小気味よさのある高座だったと思います
会全体での位置づけという点では、会での破天荒な部分の最低標準記録のような部分もありまして・・・。ユニークな部分もいろいろとある噺なのですがちょっと常識の枠を感じるところもある・・・。狙っている客層がひろいのしれないですけれど。
まあ、残りのメンバーがそれぞれに強烈ですから・・・、そう感じただけかもしれませんが・・・。
・柳家喬太郎師匠
相変わらずの肌理の細かい語り口で・・・、理詰めで笑わせる部分と力技で笑いを取る部分のバランス感覚が抜群・・・・。超リアリズム的な表現がある一方で、さらっと噺を流す部分もあってこのバランスもまた秀逸・・。噺を手のひらに乗せて、しなやかな手つきで仕事をした上で客にすっと差し出す感じ・・・。
昇太師匠の噺にでてくる同窓会の雰囲気をちゃんと引き継いでいて・・・。一方で幽霊のキャラクターもしっかりと設定されている。噺の輪郭がくっきりあって、そこに喬太郎師匠一流の味付けがあって。
仕込まれたものの結果が終盤どんどん溢れていく感じだけなら、昇太師匠の方が骨格がすっきりしているのですが、喬太郎師匠の表現には立体感というかふわっと浮き立ってくるものがある・・・。表現のため息がでるほどの柔らかさ、だから、幽霊が違和感なく実存できる。・・・。この作業、最後に登板の白鳥師匠の高座にまで生きることになります。
そこまで昇華された表現でありながら、お高くとまったりきどったりしていないのも喬太郎師匠の魅力で・・・。中にとんでもない男女のまぐわいのシーンが織り込まれたり、幽霊が水洗便所に流されたりというのが当たり前のように挿入されていく・・・。シュールであったり、妙に実存感がある艶かしさであったり・・・、それらによって自在に噺の色が変化していくのが観客にはたまらない魅力で・・・。。
後の演者にも噺をつなぐ都合で、噺の成り行きにほんの少し冗漫な部分があったり、さげにもっていく最後の部分で人情噺風にまとめようとしたのがちょっともたもたした部分はありましたが、それでもたっぷりと喬太郎ワールドを楽しませていただきました。
・林家彦いち師匠
パワー落語とでも言いましょうか・・・。噺のもっていきかたも結構強引だし、高座自身にもグイグイ押していくような力が前面に出ていて・・・。でも、そこにいやみがないのが彦いち師匠の人徳で、観客も無抵抗に噺を受け入れてしまうようなところがある・・・。
決して器用な噺のもっていきかたではなく、噺の飛んでいる部分がシュールというより道化という感じがしたり、力がありすぎる表現で、重いものも軽く見えてしまうようなところもあったり・・・。また、場面ごとのつながりもかくかくしていて、それをあとでならしていくような部分も見られたりするのですが、それらが複合すると、えもいわれぬ滑稽感へと熟成していくのです。
その滑稽感のなかに浅間山荘で使われたというとても具体的な道具が登場すると、うそにぱっと色がついたような華やかさが生まれる。この色がなかなか鮮やかで・・・。
こうなると多少噺が破綻していても関係ないですね。とんこつラーメンの無骨なおいしさとも言いましょうか、終わってみれば、充実感がある高座だったと思います。
たまに、中毒患者のように聞きたくなるようなタイプの噺かと・・・。
・三遊亭白鳥師匠
金庫破りの話から始まって、噺が次々と転がっていきます。長い間金庫の管理をしてきたという男が仲間に加わって金庫の錠に「情」をからめて金庫をあけようという、発想だけでも思いっきりシュールな噺に、人情噺の情がからんで、挙句の果てには、金庫が人情噺の主人公となるという・・・・。
しかも、シュールに噺がころがっていきながら、最後を屋台崩しのように破綻させないだけの構成力が白鳥師匠には備わっていて・・・。芝浜などの語り口で裏を補強しながら、やがては喬太郎師匠が育てた幽霊のキャラクターまで金庫に憑りつかせて・・・。その金庫を歩かせて、最後には速度を上げるためにころがって・・・。落ちがわりに横転しながら高座を離れるという離れ業までやってしまう(詳細はあまりのネタバレになるので遠慮しますが・・・。)
いやー、この高座には舌を巻きました。たとえば芝浜のパロディ的な部分って破天荒なのですが裏に芸の心棒がびしっと一本通っていて、観客が人情話の感覚でそのまま金庫がしゃべる噺に乗せられてしまう。そりゃ、冷静に考えればとんでもない方向に噺がすすんでいくのですが、よしんばこじ付けであっても裏地がちゃんとつけられているから、常道から外れてもそこに無理がない。常道の箍がひょいと外れた時点で噺がばらばらに散らばるのではなく、もっと豊かな新しい秩序がさらに物語の懐を大きくしていく。「料理の鉄人」で、想像できないような素材の組み合わせがコンサバティブな料理法で、まったく新しいジャンルの名料理に生まれ変わっていくような・・・。これはすごい・・・!!
これは良いものを聴いたと思ったことでした。
本当に充実の4席で・・・・。同じ制約のなかで緩やかに噺がつながっていくというのも楽しい試みで・・・・。
4人が作る一つのものではなく、ひとつの土台から4人の個性がいっそう味わい深く広がるよい企画の会だったと思います。
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PS:帰りに白鳥師匠の新刊「砂漠のバー止まり木」を購入・・・。すごく面白くて一気に読んでしまいました。おすすめということで。
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