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東西落語研鑽会 これを至芸といわずして

ちょいと前の話、1月29日、よみうりホールでの東西落語研鑽会を観てまいりました。18時30分開演はサラリーマンにはちょっとつらい・・・。銀座を大急ぎで歩いて何とかセーフでありましたが・・・。

でも、急いだ甲斐がありました。なんかすごい会でした。

「権助提灯」 柳家三三 

三三師匠がなんとトップバッターです。この会の力量がなせる業です。飄々とした感じで高座に上がられるとあいかわら切れと艶のある語り口で・・・。観客は気がついたら舞台にすっと目を持っていかれている感じ。客の掴み方が本当に上手です。

噺に入るところにも力みがありません。すうっと噺の世界に誘われるよう。しかし、いったん噺の世界にはいってしまうとそこは女の意地の張り合い、正妻の腰の据わり方と妾のプライド・・・、本当に見事に描き分けられていました。

しかし一番感心したのは権助の表現で・・・。だんなを旦那と思わないというだけではなく、核心をつく一言のタイミングというか切れが抜群なのです。ピントがすっとあう感じ・・・。。これがまたおかみさんとお妾さんの言動を引き立てる・・・。旦那は哀れなものですが、男の甲斐性なんてそんなものかもしれません。

提灯のいったりきたりからさらに加速度がついて・・・・。転がり落ちるような感じがたまりませんでした。

「鋳掛屋」 桂 春団治 

春団治師匠、20年以上ぶりに高座を拝見しました。

そりゃね、もうええお歳やというのは事実です。声の張りも昔を知っているだけに当時と違うのは事実・・・。でも衰えたのではなく枯れたという感じで、凛とした高座の空気は昔のまま・・・。羽織をすっと脱ぐ仕草の美しさといったら・・・。きちんと高座に美学があって、それが少しも崩れていない・・・。お客様を立てる語り口、筋目がびしっと通っていて、観客の背筋まできゅっと伸びてしまうほど。

鋳掛屋さん自体を昨今あまり見かけなくなりましたから、演じられることも少なくなっているのかもしれませんが、市井の雰囲気や子供たちの生き生きとした姿は本当に魅力がいっぱいです。子供を演じるときの春団治の声色の多彩さ、そして相手をする鋳掛屋の表情の明るさ。

いいんですよ・・・。理屈じゃないですね、こういうよさって。

「あくび指南」 柳家 小三治

桂春団治師匠ご出演の映画をBSで観たお話が枕、観ていれば感情を共有できたのにっていうことで「そうかもしれない」という映画の連呼が枕代わり・・・。師匠一流の語り口でさくっと噺にはいります。

習い事の遍歴を語る導入部分は上方落語を聴きなれた私にはちょっとはしょった長さに感じたのですが、その分本来のあくびの師匠がとても丁寧に描かれていて・・・。そこがしっかりしているから、不器用な男があくびの稽古をするおかしさが波状攻撃でやってきます。最初に超スローカーブを投げておいて、そのあとしっかりと球筋の定まった直球が一気に笑いをブレイクさせる感じ・・・。

タバコのすいっぷりがおかしくて、あくびが出ないおかしさも根をしっかりと張っていて・・・。味がしっかりと深い。

中入り前、たっぷり楽しませていただきました

中入り

「茶の湯」 春風亭 昇太

コンサバティブな「茶の湯」に比べて、若干今様な部分が多い感じ・・・。工夫があちこちに見られて。それが8割くらいは良いほうに出て、その代償として2割くらい昔ながらの何かを失っている感じですかねぇ・・・。でも差し引きで6割の部分が面白くなっているのなら、こういう演じ方も絶対ありだと思います。

一番感心したのは家作の三件長屋のくだり、ぐいぐいと絡め取るような勢いがありました。良い歳をして茶の湯を知らないことを隠すのに引越しというのも乱暴な噺ですが、その乱暴が三軒長屋のコモンセンスになっている様な表現が実に生き生きとしていて・・・。

一方で利休饅頭の作り方のあたりは時間の都合で適度に割愛した感じ・・・。もうすこし茶と御菓子のひどさに解説が入ってもよかったような気がしました。しかし落ちはゆっくりと丁寧にきっちりと収めて噺がきゅっと締まった感じになりました。

まあ、小三治師匠なんかで昔聞いた「茶の湯」なんかと比べると笑わせる力点がかなり違っていて、聴く方も慣れがあるから最初はちょっと違和感がある・・・。でもそれらが噺が流れ出すとたちまち霧散していくところに昇太師匠の力量を感じたことでした。

「天下一浮かれの屑より」 林家 染丸

いったん幕が下ろされて、高座の台座がはずされて染丸師匠が登場です。この噺、江戸落語では紙屑屋というのだそうで・・・。

昔は某大店の若旦那、遊びが高じで落ちぶれて、今では昔の知り合いの二階に居候・・・。で、半分もてました知り合いは紙くずのより分けの仕事旦那に紹介します。しかし、そこに出てくる手紙や都々逸の本などを読んでいるうちに想像がたくましくなって妄想をはじめる。手紙の女性を妄想し、謡の本がでてきたら、その一節から謡に入り込んでしまう・・・。、上方落語には「はめ物」という伝家の宝刀がありますから、当然そこに粋なちんとんしゃんが入るわけで・・・。

作業をしている長屋の片どなりを稽古屋、反対側では孝行息子が病身母親を看病している設定にして、芸事の本が出ていたゆうては下座が音曲を流すわけです。

で、若旦那の染丸師匠が座布団の上で踊りだす・・・。それも上半身だけで踊るのではありません。しゃがんだ格好で座布団の上を回るのです。こういうのを音曲噺とも言うのだそうですが、そのはまり方が芝居噺の比ではない。体力がいるやろとは思うけれど観ているほうには心が浮き立つような感覚がしっかりと伝わってきます。、稽古屋の音曲に合わせていつまででも踊っているような感じがしっかり・。隣の孝行息子が怒鳴り込んでくる設定忘れたら明日まで踊っていそうな感じ・・・。居候はあほですけれど、あほと切り捨てるのではなくあほの心情ががしっかりと表現されているのです

枕で、なくなった小文枝師匠(逝去時文枝師匠)から教わった噺だととおっしゃっていましたが、故文枝師匠とはまた違う華が染丸師匠にはあって・・・・。文枝師匠のような艶とはちょっと違うのですが、なんていうのかきめの細かい色気のようなものが染丸師匠から伝わってくる。抜けるような華やかさではないのですが観ていて楽しい。、長屋が浮かれたつような感じにものすごいリアリティがあって・・・。

こういう噺で聴く三味線の粋で心浮き立つこと。まあ、そう思わせるのが染丸師匠の芸でもあるのでしょうけれど・・・。

あんまり聴くことのない話だけに、観ていて興味も尽きず、関西風の落ちもしっかりときかせていただけて・・・、充実感たっぷりの主任でした。

帰り道はちょっと雨、でもええ噺を聴いた後は雨があまり気になりませんでした。

至芸は人を満たすのかもしれませんね・・・。

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