仏団観音びらき 「蓮池極楽ランド」 は極上の七味をかけたごった煮の
劇団名も公演名も結構すごい・・・。実は桂都んぼ師匠という米朝一門の噺家の方のMixi上の日記で公演を見つけて・・・。劇団名を見たときには、なんか宗教団体の布教活動かともおもいましたが、実際にはぴりっと社会風刺のスパイスが聞いた非常に秀逸な関西演劇でした。
(ここから先にはネタバレがあります。十分ご留意の上読み進んでいただきますようおねがいいたします。)
物語は、ショーから始まります。ちょっとチープでどこかずれている感じ・・・。芥川龍之介先生の蜘蛛の糸をかなりデフォルメしたような作品なのですが、この崩れ具合が絶妙で・・・、物語のトーンがこのショーから決まっていきます。出演者の内側の関係、経営者との関係などが描かれていく中で、とても一流にはなれないけれど、でも一応プロというきわどい場面を生きていく人々の姿が見事に洗い出されていきます。
作者の本木香吏は、自らがテーマパークのキャストであった経験を生かしてそのチープさと危うさの中で生きる人々を赤裸々に描いていきます。一方で夢をうるというか、非現実の世界を作り出しながら、現実の生活がしっかりあって、生身の人間たちの下世話な話がころがっている・・・。一人ひとりの物語の交差点の上で行われるようなショーのどうしようもないはかなさのなかに、登場人物それぞれのプライドや感覚がぽとぽととにじみ出てくる・・・。
でも、そうはいっても湿っぽいだけの話にならないところが、この劇団の強みなわけで・・・。あこぎにさえ思える関西テイストの笑い、女性の生理まで露骨に登場する生々しさ、不倫に同性愛、新興宗教といったひとつ間違えばしゃれにならない世界をすれすれで通過するような危う気持ちよさ・・・。過剰なプライドと不必要な卑下、盛り上がらないテンションとあがりすぎるテンション。それらがごった煮になって、でも市井の生活が不思議と浮かんできて・・・。
どうにもならないけれどなんか温くてでられないような・・・。その中庸さってたぶん日本人の90%以上が浸っている世界かも・・・。ひとつ間違えば大変なことになるようなアブノーマルな世界なのに、なぜか親近感が沸いてしまう。100%満たされることも救われることもない中で、でも地獄に落ちきることもなく、それなりの居場所を見つけて人は生きていける・・・。
2時間、どっぷりと芝居の世界につかりながら、気がつけば後日談の映像のなかに、観客は普通の人生のスライスをいくつも見つけて・・・、おもろいと思いながら納得してしまうのです。
派手さはないけれどなんか心に残る・・・・、というかきわめて忘れにくい・・・。
劇団はいろいろと大変らしいですけれど、この劇団の持つ吸引力にもっと惹かれたいような・・・。次回公演がぜひありますようにと真摯に願ったことでした。
役者については、桂都んぼ師匠以外すべて初見、でも、若干演技力のばらつきはあるもの、一人ひとりが目鼻だちがはっきりとした演じ方をしていて、それぞれのキャラに観客が感情移入をしていける・・・。例外なく好演だったと思います。
おかま役の藤原新太郎は一人で舞台を保つことができるだけの力量がありながら、出るところは思いっきり出て抑えるところはしっかり抑えるという演技の濃淡が見事でした。根本には押し出しがあって舞台をしっかりと引っ張っていく感じ。
ショーのぬいぐるみを担当した、本木香吏・藤原求実子・小林徹・ベッカム木下にはそれぞれに役柄の個性というか、存在の説得力を作り出すだけのパワーを感じました。演技の中に物語に安易に流される部分がなく、役の方向性を堅持しているのがよい。特に藤原の演技にはしゃきっとした歯切れがあり、観ていても気持ちがよかったです。萬知昭の腰の据わり方や東口善計の不可思議な誠実さも物語を縁の下からしっかりとささえていました。
天女役の広田あきにはある種の唯我独尊的な間口の広さがあって、見ていてじわっと彼女の世界が観客に伝わってきたし、同じ天女役の宮奥雅子が演じるこだわりの強さと見事な相乗効果だったように思います。
峰U子は怪演、一定した演技のトーンをきっちりと保ちながら、裏側で抑えているものをしっかりと観客に見せることができる深さを持っていました。池下理都子も事務方の冷静さの裏側に潜む女がすごく生々しくて・・・。桂都んぼも男としての存在感というか、しゃあないなあと思わせるだけの性というか業のようなものが、ふわっと劇場全体にただようような演技を見せました。一振りほどの誠実さが男の根本にあるちょっと痛んでいくようなだらしなさを浮かび上がらせた感じで存在に説得力がありました。
松岡里花のデフォルメしたような存在感と濱崎右近の人を喰ったようなファンぶりも、演じられる世界の外堀をしっかりと造っていたと思います。
客いじりがあったり、ディズニー系の極上の時事ねたがさらっと入ったり・・・。ごった煮のそれぞれの味がお互いを生かしあって、もつ煮込みのおいしいやつに原了郭の黒七味をぱらりと振って銘柄のようわからん焼酎をしこたま飲んでほろ酔いになったような・・・・。
過去好演のDVDも購入してみたのですが、なんか癖になるんですよ・・・。この劇団の芝居。うーーーん、ようわからんけど、麻薬に近いようななにかが含まれていて、常習性があることだけは間違いありません。
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