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ヤング軒のパフォーマンスにみたされて@新宿2丁目

久しぶりにちょっと夜遊びがてら・・・。ダンスパフォーマンスを観てきました。

新宿2丁目の路地を入ったところ・・・。ちょっと非現実にひたるには抜群のロケーション。そこで演じられた秀逸なパフォーマンスはいずれも観客の心を絡めとるような創意と力に満ちていました。3部構成で間に休憩が挟まるのですが、どんどん深みにはまっていく感じ・・・。そして、久しぶりになにかを越えた感覚を味わうことができました。

出演者は

じゅんじゅん[ヤング軒]・たかぎまゆ[ヤング軒]・すがぽん・べてぃこ・楠原竜也・陽茂弥・横山良平・須藤剛・長谷川寧

出演者ごとに印象を書かせていただくのが、一番心に残ったことを伝えやすいとおもうので・・・。順番は特に意識せずに、主催のふたり(ヤング軒)はトリに回して、それ以外のパフォーマー達についてはおもいつくままに・・・。

(ネタバレとは言わないかもしれませんが、ここからは具体的なパフォーマンスの内容がふくまれますので、ご承知おきのうえお読みください。表現を伝えられるほど優れた文章を書けるわけではないので大丈夫だとは思うのですが、一応念のため・・・)

べてぃこ

1・2Stageでそれぞれパフォーマンスがありました。

ひとつは「キャバレー」、衣装やメイク、さらには振り付けも映画が下敷きになっているように思えるのですが、力より切れが勝ったダンスにはライザミネリの世界とは違ったテイストがありました。スクリーンの退廃を2割減じて光を1割増した感じ・・・。結果として映画より強い躍動感が伝わってきたように思います。そもそも「キャバレー」の主人公、サリーのキャラクターってサム・メンデスとボブ・フォッシーの描き方もなにか違っていましたが、ぺてぃこサリーはボブ・フォッシーよりさらにナイーブで繊細な印象・・・。でも、そういう比較がすっと浮かんでくるのは、彼女のパフォーマンスのクオリティが他のサリーに決して負けていないから。舞台だけでなく客席の風景までもが彼女のパフォーマンスに取り込まれて素敵な空間を作り上げてくれました。

もうひとつは、「ぺてぃこ体操2007」。観客を巻き込んで指の体操をさせるところから入って場を和ませておいて、一瞬にプロの動きに入り込んで観客を突き放す・・・。彼女のパフォーマンスには飛びぬけた切れがあります。まるで追いかけてくる子供をあざわらう蝶のように、力を感じさせないほどしなやかなに観客を自分の懐に誘い込んでおいて、、ある一瞬に研ぎ澄まされた鋼のような切れ味で観客を支配していきます。一瞬でナチュラルな表情が消えて、彼女の世界に放り込まれるのですから、観客は身構えることもできない。彼女のもつ表現力を誇示するための工夫が見事に生きた作品だったと思います。ほんと、あの切れをみせられると観客は粟立ちぐっと引き寄せられます。すごく芸の立つ上方落語家が小拍子をびしっと鳴らして場面を一気にかえるような・・・・。小柄で華奢な躯体から一気にあふれ出すオーラに息を呑みました。

かぼちゃボーイズ

男性3名のユニット(陽茂弥・横山良平・須藤剛のお3人だと思います。)

なんというのだろう、かぼちゃ風(ハロウィンで中を削るようなやつ)の短パン・・・をはいて3Stage全てに登場します。あとからわかることなのですが、衣装にもちょっとした仕掛けがあって・・・。

2Stageの「シンデレラ」は特に秀逸。ディズニーの方が見たら腰を抜かすような表現ですが、そこには高いリアリティが存在するのです。なんというのか、大根が真っ白ではなく泥付きのままで売られているようなリアルさ・・・。馬・シンデレラ・かぼちゃの3点セットは強烈なデフォルメがほどこされているのに、その中に高貴な包み紙を解いた田舎娘のシンデレラの心情のようなものがしっかりと見えるのです。

彼らは空気を演じることに長けているのかもしれません。3人の緩慢さを表現した動きはどうしようもなくおかしかったりもするのですが、ではなにをおかしいと感じるかというと、たぶん彼らの存在する空間に漂う空気なのです。シンデレラにしてもそう・・・。時計の音とともに崩れていく世界が、ディズニー映画や絵本のように美しくあざやかな訳もなく・・・。そのなかであがくようなシンデレラ、見た瞬間には「なんじゅこりゃ」なのですが、見終わって時間がたっていくと、次第にそのシンデレラが心になじんでいく。それはシンデレラの存在する空間の空気を、彼らが見事に想像の海から掬い取って、したたかに演じて見せたからなのだろうと思います。

・すがぽん

ダンサーとしての力量はぺてぃこさん、まゆさんとともに冒頭に踊った「誘われてフラメンコ」にて証明済、そもそもこの演目がスーパーで特売されている素材に一流料理人が最高級のスパイスで味付けしたようなお味、寸評を加えるなら「いと怪しくいとおいし」・・・。最近深夜番組で流行の「おば芸」なんかも、万一彼らがやるとなるとすごく洗練されたパフォーマンスになってしまうのでしょうね・・・。

しかし強烈だったのは2・3ステージに登場する「西葛西ダンス教室」。

サラリーマンNEOのセクスィ部長を想起させるすがぽん氏の妖しさと、たかぎまゆさんの本物より本物らしい駅前の広告放送アナウンスのコラボレーションには参りました。ちょっとしょぼい駅前商店街を支配する下世話な感覚をプロの洗練された動きや発声でやるのはすごく卑怯(褒め言葉)です。普通に考えると乖離してしまうような「ダンス」という言葉と食べ物の匂いが漂うような通りの風景をあの独特の広告放送口調をマドラーにして混ぜ合わせ成り立たせてしまうのですが、その無茶から浮かび上がってくる、場末のダンス教室が持つリアルなうそっぽさがたまらない・・・。しばらく笑いを止められませんでしたが、同時に印象が強すぎてそのうち夢に出てくるような世界でもありました。

・長谷川 寧

映像とパフォーマンスの共存は、特に珍しいものではないと思うのですが、そのシンプルさにはふっと目をひかれました。機材の制約などもあって凝ったことはできないということもあったのでしょうけれど・・・。作り手側が意図したこととは違うのかもしれませんが、「映像技術の急速な進化は舞台空間のイメージを容易にひろげてしまうけれど、結局空間を作り上げ、ささえているのは映像ではなくパフォーマーなのだ」ということを暗に証明して見せているようにも思えました。悪い意味ではなく、ある種の生真面目さが彼の舞台にあって、その匂いが私にそんなことを想起させたのかもしれません。

・楠原 竜也

物語のアウトラインはすごくシンプルで、モンティパイソンにでも出てくるような掌編のイメージなのですが、見せ方に技があります。後半にある落ちというかサプライズへの道をなまものの観客を相手に見事に作り上げていく・・・。客のテーブルを占拠する仕草の美しさ、たった一つの光るボールに導かれた作り物の危ういゴージャスさ・・・、それは飾られたトラップのようにも思えます。前ふりでシェーカーを振る姿は、本当にカクテルを作る姿とちょっと違うなと思ったのですが、これが落ちの部分で生きてくる・・・。

あとから考えると、時間がすごくうまくコントロールされているのだと思います。小道具のひとつずつを観客に見せる長さ、不確定なお客に酒を飲ませる時間もリズムだけは崩さずに進めていく。女性をシェークする時間も絶妙で・・・。

この人はトータルの尺をきちんとみて、そのなかに物語をうまく詰め込んでいく。きわめて演劇的な構成力を備えたフォーマーなのだと感じました。

・ヤング軒

男女(じゅんじゅんたかぎまゆ)のユニットなのですが、ユニットとしてべったり合わさっての表現というわけではなく、舞台上の必要に応じてお互いのの表現を引き立てあうよう感じでした。

じゅんじゅんには1stageの最後にソロ的なパフォーマンスがありました。なんというか、物語を観客に積もらせていくような演技というか・・・。時間が進むにつれて少しずつ重さが観客にやってくるというか・・・。演者の意図とはちがうのかもしれませんが、なごみのようなものも少し感じたり・・・。なにか惹かれるのですが、一方でこの人の作品を真に受け入れるにはてもう少しゆったりとした時間が必要なのかも知れないと感じました

たかぎまゆさん、春に野毛山(急な坂スタジオ)でみた野外のパフォーマンスがいまでも強烈に心に残っています。しかし、今回のパフォーマンスを観て春のパフォーマンスが彼女の力量の氷山の上っ面であったことがよくわかりました。

1Stageの氷雨、彼女はマイクを渡され、伴奏を求め、ゆっくりとその場を歌謡ショーの雰囲気にもっていきます。歌が始まり取り出されたのは小さな傘。ポーズが決まり、小さな傘がさされると、魔法のように歌にこめられたニュアンスが見事に現出していく。ほんのすこしだけ守られて、でもそれが不幸せではない・・・・。彼女の歌はちょっぴりチープなテイストで、だけどデフォルメされた仕草と重なったとたんに息をのむような訴求力が生まれて・・・。気がつけば歌詞のフレーズが色を発し、大きく深く舞台上にひろがっているのです。

2Stageのパフォーマンスでも、彼女の表現は冴え渡ります。同じものをみた春にも同じようなことを書いたのですが、彼女の歌とポーズから伝わる、歌手を目指す女性の想い、その熱さや強さと、それらの想いをコントロールできない不器用さが言葉や理性をこえてダイレクトに観客の脳髄に伝わってくる感じ・・・。動悸のようなジャンプ、力を抜く事をしない四肢・・・。多少アレンジは違っても一応既知の演目なのに、春同様に視線を釘づけにされてしまいました。彼女のすごさ、表現されるものの豊かさが瞬殺で観客の心をみたしてしまうのです。どこかわざと薄っぺらにつくってあって、でも覗き込むと奥行きがものすごくある世界・・・。だれも作りえないであろう彼女の世界がするっと入ってきて心の中に居座ってしまいます。

しかし、たかぎまゆワールドはそれだけでは終わりませんでした。3Stageに入ると彼女の表現力は箍をはずしたように広がり牙をむきます。最初の「クワイエット」は圧巻でした。不協和音のなかでのやわらかい動きはたとえばムンクの描く世界をみるよう・・・・。その動きはまるで概念の束縛の鎖を解く姿にもみえるし、何かへの依存にも思える。また、解き放たれた彼女の世界へのゲートウェイにも思えます。高い芸術性に裏打ちされた表現がさらっと観客に提示される。

そして、観客の感性をたっぷりと暖めておいて、「アン カフェ」・・・。個人的な嗜好の問題なのかもしれませんが、私にとってはまさにツボ。これはやばいです。椅子に座った彼女の動き、指はおろか爪の末端まで神経がピッっと行き届いたような四肢の動きを観るだけで快楽すら伴うようなグルーブ感があって・・・。選曲のすばらしさ、それを支えるダンスの熟度、振り付けのセンス・・・、それらが混在して観客を溺れさせるような洗練されたパフォーマンス。見ていて目いっぱいときめく。楽しい。それも理性が介在してたのしいのではなく、うまく表現できないのですが、生理的に楽しい。酒の薫りや紫煙に揺らぐライトがさらにパフォーマンスを引き立てて・・・。もうわくわくなんて生易しい範疇で語れる感覚ではありません。ここまで感覚を舞台にゆだねてダンスパフォーマンスをみるのって、昔ミンスコフ劇場でスウィートチャリティーのダンスシーンを観たとき以来かも・・・。この域まで連れてこられると、もう虜状態。彼女の世界に取り込まれて、彼女の感性のなすがまま。さらに2演目あってパフォーマンスが終わったときには、ただ座ってほげっと見ていただけのはずなのに、こちらの息が切れていた・・・。

ほんと、たかぎまゆワールドにはまってしまいました。

ちなみに今回のタイトル、「じゅんじゅん&たかぎまゆ プレゼンツ、ヤング軒with飲食ディナーショーにあこがれて」、場所はBar「非常口」、最初に書いたとおり、新宿2丁目の地図があってもちょっと迷いそうな場所。

それは機材の不備があったり、いろんな掛け声が飛んだり、紫煙がライトにちょっと影をつくったり、たとえば新国立劇場のように観客が品よく舞踏を楽しむなんて雰囲気ではなかったけれど、でもあの場所だからこそより輝いたパフォーマーの表現もたくさんあったのではないでしょうか。

あの場所で、あのクオリティのパフォーマンスを供給する・・・。、作り手側にとっては本当に大変なワンナイトショーだったとは思うのですが・・。少なくとも、観客にとってはまがいものじゃない、本物を受け取ったこの上なくぜいたくな時間でした。まあ、一度本物でできたおいしいものを味わった子供や観客は、まがい物の味を見分けるようになるし、ひごろはまがいもので我慢していても、心は本物を欲するようになるわけで・・・・。作り手側の苦労も省みず、贅沢ついでに身勝手を承知で言わせていただくとすれば、「こんなのまた観たい・・!」。

なにはともあれ理屈抜きに豊潤で楽しい水曜日の夜でございました。おかげさまで、本業のサラリーマン仕事は地獄に落とされて閻魔様の手も借りたいくらいに忙しかったのですが、別にいらだつこともなく、ほくほくした気持ちで週末まですごすことができました。それだけ心の隅まで満たされていたのだとおもいます。

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