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無意識っぽく絶妙な力加減、MCR「マシュマロホイップパンクロック」

久しぶりにMCRのお芝居を見てきました。前回見た「ヒマホテル」のあとも、新宿村での小規模公演がけっこうあったようなのですが、時間的に合わなくて残念な想いをしていた劇団、今回も2作品同時上演ということでしたが、とりあえず片方だけなんとかみることができました。

(ここから先にはネタばれがありますので充分にご留意ください!!)

物語は比較的シンプルで、男女の感覚が共有されてしまうという設定もびっくりするほどめずらしいものではありません。まあ、強いて言えば逆転するという設定が多い中で、今回は共有(自分の感覚は自分で感じ相手の感覚も自分で感じる)というところがちょっと新しいといえば新しい・・・。ただ、そこから派生していく物語の乾き方と潤いはMCR独特のもので、櫻井智也が紡ぐソリッドでなりあがらどこか心に浸潤してくるような物語のテイストをたっぷりと楽しむことができました。

主人公の余命が定められたことの悲嘆、その一方で自らの死に対する非現実感、その悲嘆が見知らぬ女性の感覚が伝わってくることにより阻害される悲劇・・・。やがて感覚の主を知って、プライバシーがあから様になることのおかしさと、憎しみながら生まれてはじめる奇妙な連帯感・・・。二人の友人、恋人、恋人の友人・・・、弟、弟の婚約者、櫻井はそれらの登場人物をちょっとアンバランスに提示して、微妙な真実を浮かび上がらせていきます。さらに、櫻井演じる医者が、本人にとっては一大事である命が失われることの社会における軽さを表したり、その中で主人公の思いの軽さや卑小さ、でもその一方で人をおもうことから派生する緩やかな暖かさのひろがりや、ちょっとしたいとおしさまでを切れをもった構成でさばいていきます。

結局は櫻井のセンスの良さだと思うのですよ・・・。びっくりするような素材はなにもない、でも非凡な日常は舞台上に間違いなく存在していて、役者たちの力加減で作られた切れのよい明と暗のコントラストのなかに浮かび上がっていくし、非凡なゆえにゆっくりと観客は引き込まれていく・・・。そう、決定的な理由もないのですが、軽さと深さのアンバランスさが、麻薬的な感覚に昇華して観客はどうにも引きずられてしまうのです。深い憂いの中で淡々と進む日々に、非日常な日常の風景が突然現出して、そのまま妙に真剣になれない感覚のなか、大切なことは待ったなしで容赦なく過ぎていく・・・。

綱渡りの途中で、ピエロが立ち止まって見せる笑顔のような間や、芝居から垣間見る風景がとても切なくいとおしく感じる瞬間が何箇所か・・・。切ないのだけれど涙するほどではない、良い意味での中途半端な感覚でつづられた(そのさじ加減がちゃんとできているという誉め言葉)芝居でありました

役者では、黒岩三佳が本領発揮、高橋優子、生見司織、異儀田夏葉も好演でした。篠本美帆は怪演、ちょっと糊しろをはみ出したような台詞なのですが、間がとても計算されていて、ぐぐっと引き込まれました。江見・福井・渡辺といったところの力も安定しており、おがわじゅんやの明るさもよかった。小野紀亮演じる弟はある種の多面性をしっかり出していました。櫻井の突っ込み主体の演技の切れは言わずもがなです。

何が残るかって聞かれても、すぐには言いにくい芝居だし、どこに惹かれたのかを問われても答えようがないのですが、でも次の公演も観たいと思ってしまう・・・。大爆笑はしないのだけれど、ちゃんと積もる笑いも用意されていて、おまけに笑いの向こう見えるものもしっかりと存在していて・・・、細かい粒子のように落ちていく時間の重さを心地よく感じてしまう。

最上級のセンスでコントロールされた芝居って、こういう境地に行き着くのかもしれませんね。演出家としての櫻井は特に意識せずにやっていることなのかもしれませんが・・・。

ちょっと見はそうはみえないけれど、きっとどこも代わりになることができない劇団であり芝居なのだろうなと思います。

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