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新生「双数姉妹」の力量

ちょっと書き込みが遅れてしまいましたが、5月28日に双数姉妹「チューブラルーム」を観にいきました。

双数姉妹は新しい劇団員がどっと入ってそのお披露目公演とのこと。ある意味では、劇団として再生ともいえる公演になりました。

(ここからネタバレしますよ!!要注意ですよ)

まず驚かされるのは舞台装置。真ん中に大きなドラムがしつらえてあるのです。ちょうどリスの檻にしつらえられている回転道具のような感じ。ドラムには机や椅子などが備え付けられるようになっていてそれも上下に・・・。

また、長距離を歩いていくようなシーンではドラムが廻って距離感を演出したりもするのです。

3つの物語がかさなるようになっていてそれらがドラムの回転でスムーズに切り替えられていく・・・。舞台を見るものにストレスがなくなり3つの物語それぞれがすっと観客に入ってきます。また、3つの物語の接点になる部分で登場人物の3人が歩きながら話すシーンがあるのですが、その道程の長さが物語の説得力になっている。非常に巧みなやり方だと思います。

内容的にも、いろんなことを考えさせるものでした。小池竹見の温かさと冷徹さが見事に調和した作品ではあったのですが、今回は達観のような部分がすこし加わったテイストに感じました。最後の1シーンがふっと舞台を照らしたような感じで・・・。あのときの吉田さんの表情が本当に印象的で・・・。

あと、芝居の内容とは直接関係ないのですが、今の双数姉妹って役者が3層に別れている感じでそれもおもしろかった。

新人とはいうものの、新しくオーディションで加わった役者達ってみんなそれなりに上手なのですよ。物語にしっかり乗った演技ができているし、演技の強弱もついているし、ここ一番で訴えかけてくる力もある。男優陣では懐 大介さんの演技が一番柔らかい感じ、しかしみんな堅実な演技をされます。女優は二人とも個性がありましたが、まだ殻をかぶっている印象、でも殻の中に魅力がちゃんと透けて見えます。

でも、古参の劇団員とは明らかに力の差があるのです。小林至さんが一言いうとそれで色が決まってあと新人たちがそれに乗ってくるみたいな構図がある・・・。五味さんにしてもそうですよ。彼は2年前くらいから明らかに演技が変わってきて押すだけではなく受ける演技が出来るようになったと感じているのですが、今回、その力が遺憾なく発揮されていた。

井上さんもそうですよね・・・。あの教師役の冷徹な部分、しびれました。難しい役だと思うのですよ。教師としての威厳を持った中に自分のエゴをのせなければならない・・・。そこが分離せずにひとりの個性としてしっかり演じられている・・・。しかもとてもナチュラルに・・・。比較的目立たない役が多かった彼女ですが、今回はまさに実力発揮といったところでしょうか。

今林さんの演技もすごかったですね。役者が違うっていうのは彼のためにある言葉ではと思えるほど・・・。彼が新人達と絡むのをみていると、しっかりと新人達の演技を受けてサポートしているのがわかる。それは井上さんも小林さんも井上さんも・・・なのですが。それでも今林さんの演技は一ランク抜けてしまうのです。本当によい芝居って観るものにとってノイズがないのですよ。すっと入ってきて観客のなかに灯るような・・。しかもパワーが違う。そう、根本的にベースになっているパワーが違うような・・・。彼の演技を観るだけでなにか入場料の元を取ったような気がしてしまう。本当によい役者であることを再確認しました。

さて、もうひとり、吉田麻起子さん。パワーは古参の役者さんと変わらない演技でした。腰が据わった押しがあって、観客席をぐっと押してくるような力になっている・・・。今林さんとの絡みをみていると良くわかるのです。新人に対してのサポートするような部分が吉田さんクラスになるともう必要ないのでしょうね・・・。吉田さんにはまともにぶつかっていくような感じがありました。ただ、彼女のパワーには、まだ若干のノイズがあるような気がします。それと力を抜いたような演技がまだ少し足りないような・・・。もう少し内側からパワーが発せられたらと思いました。それでも新人さんとはランクがちがうなって気はしましたけれど・・・。

なんというかすごく楽しみなのですよ・・・。小池さんが新しいパワーを得て、今後どのようなものを作り上げていくのか・・・。新人さんたちが吉田さんのレベルになり、やがて古参の役者さん達のレベルに近づいていったとき、とてつもない舞台空間が現出するのではないか・・・。

そんな期待を持たせる力を双数姉妹はまだ失っていない・・・。ちょっとうれしくなりました。

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