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役者が演じる場所には演劇が存在するという発見(ワークショップ発表会&あひるなんちゃら)

午前中に横浜で用事があって、夕方5時から王子小劇場で「あひるなんちゃら」のお芝居。中途半端なスケジュールでため息をついていると、救世主が現れました。

空間ゼリーの方たちが参加しているワークショップの発表会が2時から川崎であるとのこと・・・。坪田文さんが短めの台本を書かれたという情報もあって見に行ってきました。

N・A・Mナチュラルアクティングメソッド』ワークショップ発表会

正直いって予想を遥かに超えてよかったです。

まさかこんなに面白いとは思わなかった。すべてを見ることはできず前半の2本の寸劇とリーディングといわれるアクトを見てきたのですが両方ともすごく興味を惹かれました。

2本の寸劇について、役者としての力といわれると、正直それなりのばらつきがあります。台詞が滑っていたり走っていたりもあったし、ふっと段取りに走るような演技もなかったわけではありません。でも、一番要になる部分の演技は例外なくしっかりと観客に浸透していた。。それぞれの役にたいする役者さんの理解がきちんと出来ていて、その表現がパワーの差はあれ観客に浸透してくるのです。

台本自体も秀逸でした。「難問な天秤」は練馬の漫画喫茶(?)のバイトたちの話。職場内交際と妊娠について、5人の登場人物がそれぞれの価値観をしっかりと表現し、それらが交差していく部分には息をのむほどの力があり、なおかつ店長がそれらの価値観の行く先をまとめる部分では収束するに足りうるみごとな必然が提示されて・・・。

しかも、店長役の役者さん、その部分に思いっきりパワーをかけてクリーンヒットさせたような良い芝居でしたものね。また妊娠してしまった女性の不安定な心情を表す繊細な演技と、もうひとり女性店員のくっきりとした演技が共存するところに物語の奥行きが生まれて・・・。芝居が終わってカーテンコールの時間がなかったのがとても残念に思えるほど出来でした。

それだけの出来のお芝居だったので、私的にチェルフィッチュの「エンジョイ」との比較もできて・・・。「エンジョイ」は新宿の漫画喫茶の従業員のお話。尺も全然違うし表現の方法や広げ方も違うのですが、もし練馬の漫画喫茶を舞台にチェルフィッチュが同じ話をつくろうとすれば、そのテイストは今日見た寸劇と同じようなものになったのではという気がします。今日見た芝居にもチェルフィッチュの芝居にも共に良質なリアリティがあるので、モデルになった場所の差がしっかりと見えるということなのでしょうけれど。少なくとも練馬の漫画喫茶の雰囲気って今回のやり方のほうが伝わるのかなとも思いました。

シャンパンレディー」は女性4人のお芝居。世代の異なる女性達の価値観の違いを寸劇の範疇でこれだけ瑞々しく描く作者の力量には瞠目するしかありません。

登場人物間での欲しいもの/満たされるもの手に入らないもの/失うものバランス感覚の違いを見事に演じきった役者達も上手でした。最後のあたりでマニキュアを塗ってもらう女性の表情がとてもよくて・・・。

リーディングのパートでも観客に染み入ってくる何かを持った作品がいくつもありました。一番衝撃をうけたのは、ワークショップに参加できてよかったと話す女性。演じるというよりは自分の想いをまっすぐに吐露するという直球勝負なのかもしれませんが、なんていうのだろう、なにかが解き放たれるときの悦びみたいなものがしっかりと伝わってきて・・・。思わず身を乗り出して観てしまいました。彼女以外にも気がついたらしっかり体を起こしてみていたことが何度か・・・。

演劇の練りつくされた完成品は月に何度もみているのですが、このように素描のような作られ方をした表現を見る機会って初めてで、目からうろこを何枚も落としたし、芝居を観る目がリフレッシュされたような感じもしました。

よい経験をさせていただいたと思います。

で、後半の演目に後ろ髪を引かれながらも、王子へ移動。王子小劇場であひるなんちゃらを観劇です

あひるなんちゃら」は初見です。ただし役者の黒岩三佳さんについてはMCRの公演などで何度も拝見し、その演技のリズムとセンスにはかなり惹かれておりました。

(ここからネタバレがあります。ちゃんと書いたよ!!!)

今回は申し込みだけで入場料0円という公演。演目は「屋上のオフィス」。でも、入場時から工夫がいっぱい・・・。

まず、入場すると好きなところにお座りくださいといわれる。で、この辺とかいうとそこに椅子を持ってきてくれるのです。これでもう屋上にいるような気分になってしまう。客入れの音楽も格調高くモーツアルトのピアノコンチェルト20番なのですが、時々ゴジラが鳴く。キングギドラが光線を吐く音もする。なんかそのあたりも屋上で・・・。

芝居の内容はといえば、ある種の不条理劇なのでしょうね・・・。声を上げて笑うのとは違うおかしさ。声を上げる笑いはそこで消えてしまうのだけれど、声を上げない笑いは内に残るのです。

そのおかしさを間違いなくたのしんでいる私がいる・・・。黒岩三佳さんのどこか人を喰ったような演技が理屈ぬきによい。3人芝居で黒岩さん、黒岩さんの突っ込み役と黒岩三佳さんに翻弄される役という構成も非常によく考えられていて・・・。要ははまってしまうのです。共演の関村俊介さんの手馴れた突っ込みも見ていて気持ちが良いし、根津茂尚さんのいじめられっぷりにも味があるし。結果、舞台上に妙な居心地のよさがあって・・・。

6月の次回公演(6月20日~25日@王子小劇場)の前売りが会場であったので、何の躊躇もなく買ってしまいました。頭脳が欲するようなセンスがこの劇団にはある・・・通好みなのかもしれませんが、いっかい取り込まれると離れられない麻薬のような魅力がこの劇団にはあります。おすすめですよ・・・。ほんと・・・。誰にもまねの出来ない何かを持っている劇団って強いですよね・・・。

ああ、よい一日でした。横浜ー川崎ー王子と当たり芝居の行脚ですものね・・・。芝居好き冥利に尽きる一日でございました。

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コメント

はじめまして。です。
 リーディングの参加できてよかったと話していた女性。多分私です。公で発表するのが初の体験だったのでいっぱいいっぱいでした。漫画喫茶とシャンパンレディ、私も見た時すごいなと思いました。観に来てくださってありがとうございました。この日記読めて嬉しかったです。
 
 
 
 

投稿: メグミ | 2007/05/08 22:24

>>めぐみさん

はじめまして。。
こちらへのご来場ありがとうございます。

いやあ・・・、正直、川崎まで足を運んでよかったです。
貴舞台、私にとっては非常にインパクトが強く、まだ印象をひきずっています。

ほんと、良いものを見せていただいて感謝の気持ちでいっぱいです。

ありがとうございました。

投稿: りいちろ | 2007/05/09 00:23

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