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コンフィダント・絆 三谷幸喜の進化

コンフィダント・絆については正直あきらめていたのですよ。なにせ、パルコ劇場の優先、Pia、イープラスの優先等ことごとくふられ、一般発売は発売元のサイトに接続すら出来ず・・・。

でも、Parco劇場のサイトに掲載されている三谷幸喜のコメントを見るとどうしてもあきらめきれない。今回のVIDEOコメントの淡々としていること・・・。三谷幸喜が上演前に多くを語らないときには名作が多いですから・・・。(逆にこれは名作だとか是非見てほしいとか言うことをメディアで言いまくっているときって作品にどこかに彼自身の気がかりや割り切れなさがあることが多いような気がする)

で、10時に仕事の手を休めてPiaのキャンセル待ち番号へ電話をすること5日間・・・、一応平日はふつうにサラリーマンの仕事があるので、早く会社を出ることができるであろう日でないと観にいけないし・・・。でも、がんばって15分後くらいに電話がかかっても受付終了のアナウンスが流れてがっかりすること5回・・・。

6日目に電話がつながったときにはけっこう真剣にうれしかったです。ぴあの対応もとてもよくて・・・。丁寧でしかも条件をもれなく提示される。まあ、きわどいチケットの販売方法ですからねぇ・・・。

劇場に開演の15分前に来るように言われて、そこから緊張の時間が始まる。なにせ全員チケットを買えるとはかぎらないのですから・・・。20日は9人のキャンセル待ちの方が並んで、1番から順番に劇場側のめどがつくとカウンター側に呼ばれてチケットを売ってもらえる。1通話1枚なので孤独な9人がどきどきしながらカウンターを見つめる。

私の番号は4番、開演7分前に呼ばれました。けっこううれしかったですよ。席もセンターブロックの上手側、決して悪い席ではないどころか、舞台全体のバランスがしっかりわかって個々の演技が一番まっすぐに伝わる最高の席でした。予約全敗の災い転じて福となすというところでしょうか・・・。

芝居を観ている時間は至福のときでした。これまでの三谷演劇の良いところが随所にみられるだけでなく、三谷幸喜自身が一皮向けたような作品・・・。バットニュースグットタイミングのように物語の構造でみせるのでもなく、なにわバタフライのようにひとりの人生をシニカルに見せるわけでもない・・・、歴史上の事実を借景に今回の三谷は人を描くことに傾注していたような気がします。

ここから大きくネタばれします。これから作品をごらんになる方は各自の責任にてお読みください。=ちゃんと言うたで・・。これから芝居観るもんは自分の責任で読みや!)

本館にも書いたのですが、後半才能というものについて描かれるところがあります。物語の大きなキーになる部分です。才能のあるものとないもの・・・、その構図を三谷は「彦馬が行く」でも描いているのですが、今回の方がはるかに観客にはわかりやすく、また切なく感じられる場面に仕上がっています。才能がないことに気づかされるシーンの相島一之さんの演技が見事で・・・。しっかり抑えられた感情、そのなかで切れそうになる理性を抑えて・・・。もちろんそのよさは、スーラ役の中井貴一さん、どうしようもなくてとまどう寺脇康文さん、さらには自分の才能を知っていながらどうにもならないことへの怒りをもてあました生瀬勝さん久の演技の上に成り立っている・・・。支えられているから相島さんの演技自身はとてもナチュラルに作られていて・・・。ナチュラルな演技だからそのせつなさを観客は肌で感じることができる・・・。

そう、観客は肌に感じられるほど4人の絵描きと一人の踊り子の世界に取込まれていて、だから最後のシーンはせつない。堀内敬子が歌でそれらのエピソードが彼らの人生のいとおしい1シーンであることに気づかされたとき、自然に心が満ちて涙があふれる・・・。それは不思議な涙でした。

アトリエの中でのエピソードは観客をたくさんの笑いに導いてくれてくれました。その時代がさらに大きな彼らの人生の瑞々しい1シーン、帰ることのない思い出のシーンだと気づいたときに、涙が自然にあふれる・・・。

これまでの作品でも、三谷幸喜は笑いの先にあるものをいくつも提示してきました。それらを観客は十分に吸収してたくさんの拍手を送りました。でも、今回は以前の作品からさらに上へとこまを進めたというか・・・。人の一生やさらには時代までも鳥瞰して、ひとつの時代を瑞々しく美しく描いて見せた・・・。視点が一段高くなっていた・・・。

INTERMISSIONが終わるとき、三谷さん自身が気持ちよくアコーディオンを弾いてくれました。休息にざわつく劇場内を見事にパリに戻してくれた・・・。まあ、アコーディオンを落としかけたり、スタンバイする生瀬勝久にがんばってと声をかけるのは彼一流の照れ隠しなのでしょうが、終演になってからおもったのは、それらのパフォーマンスも彼自身が新しい境地に入ったことの確信と物事をなしとげたゆとりから来ているのではということ。演奏も素人とは思えない出来で・・・。結構芝居のクオリティをあげていた・・・。ゆとりって大切かも・・・

私が見た2桁の三谷作品のなかでも、この作品は多分ベストだと思います。もちろんこの先三谷作品はさらに進化していくのでしょうが、ひとつのエポックメイキングとなる作品であることに間違いはありません。

もう、19日10時の幸運にひざまずいて感謝したい気持ちになるくらい、私にとって今回の作品はすばらしいものだったのです。天才が金棒を一本手に入れたような・・・。その金棒をしっかり拝見した私はパンフレットを手に、とても豊かな気持ちで家路についたことでした

R-Club  (本館)

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