きれいの力を使うには・・・(アロッタファジャイナ)
4月7日に観たアロッタファジャイナ「1999.9年の夏休み」はとてもしたたかなお芝居でした。
感想は本館を見ていただけるとうれしいのですが、いろんなシーンが一点に吸収されるように集まってくる感覚は、野田秀樹の芝居にも共通するものがあって・・・。最初は多少もたれ感もあったのですが、中盤からは一気に引き込まれるように観てしまいました。
少年役の女優達の演技がなかなかよくて・・・。本当のことを言うとオスカープロモーションの女優さんも何人かいらっしゃるとのことで、美しさと演技力って双方成り立つのだろうかと思っていたのですが、これがまったくの杞憂。
少年役の彼女達の演技をみていると非常に抑制された感じがするのですが、今回についてはそれが物語全体をくっきりさせた印象があります。一番感心したのは本当に発声がしっかりしているというか、まっすぐに台詞が伝わってくる・・・。舞台の透き通った印象は彼女達の力によるものが大きいかったのではないでしょうか。
また、少年を女性が演じるというのはとてもうまいやり方でした。ある意味女性としての天性の才能を人並み請えて持っている役者が男性を演じることで、少年の普遍性のようなものが強調されて、物語の見晴らしがずいぶんよくなったと思います。看護士の女性達にしてもそうなのですが、女性の美の使い方がとても贅沢で効果的。衣装にしても演じ方にしても、単純に女性のうつくしさをそのまま舞台でさらけ出すのではなく、なにかのパワーに変えて観客に提示するようなテクニックがあって・・・。これが複雑な物語をしっかりと観客に伝える力になっているのですから、作演出の松枝さんの才能には舌を巻きます。
少年役以外の役者さんも、期待をはるかに超えて芸達者でした。すてきにきれいだし役者としてのパワーをしっかり持っているのだけれど、その力を舞台の色に抑制している感じの女優さんばかり・・・。終演後、医師役の蒻崎今日子さんをホワイエで拝見しましたが、舞台でみるよりもはるかに艶やかで美しくて息を呑んでしまいました。男優陣も堅実で勢いを失わない芝居でしたね。物語を前にすすめる三松さんの演技にも感心しました。これだけの役者を集め、このクオリティの戯曲を用意してこれだけの芝居ができるアロッタファジャイナ、只者ではありません。センスのよさは舞台美術や照明にも現れていて・・・、気がついたらとりこまれていた2時間でした。
ただ、この芝居は、初心者向きではなく、舞台鑑賞中級者以上向きかもしれませんね。芝居がおわってから、客席では物語についていけない当惑の声がちらっといくつか聞こえましたから・・・。いくつかの時間が入れ子になった芝居って見慣れないと本当にわからないことがあるので、そういう経験がない方にはちょっと大変だったかも・・・。私としては超好みの芝居ではありましたが・・・。ねたばれになるので詳しくは書きませんが、ファミレスの名前のつながりのあたり・・・ため息が出るほど秀逸。
なんか充足感のある芝居を見た後は、ゆっくりと心がみちてくるんですよ。芝居のパワーに満たされたけっこう幸せな土曜日の午後でした。
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コメント
こんにちは、先日はブログにコメントありがとうございました!
改めまして、蒻崎今日子@JACROWです。
楽日も終え数日経ち、少し落ち着いたところで新しい記事を書いて、こちらの記事を紹介させていただきました。
クフ。
どうぞ今後ともよろしくお願い致します。
投稿: かものはし | 2007/04/15 20:32
蒻崎今日子様
コメントおよび記事のご紹介ありがとうございます。
また先日は本当によいお芝居を拝見させていただきまして・・。
アロッタファジャイナの公演、もちろん蒻崎さんの前説や演技も、まだ印象が消えずに残っています。
舞台上の蒟崎さんってなにか心に引っかかるものがあったのですよ。で、劇場を出てホアイエというかロビーでお姿を拝見して、お持ちになられている雰囲気に思わず見とれてしまった次第。
素の蒻崎さんはもちろん存じ上げないのですが、ホアイエにいらっしゃった蒻崎さんには、女優としてのちょっとアンニュイな美しさがいっぱいで・・・。
貴ブログ、美しい女優のブログであると同時にコンテンツも読んでて興味深く(マジでけっこうはまってさかのぼってしまいました)、また定期的にお邪魔させていただきたく存じます。
とりあえずはお礼まで。
今後ともよろしくお願いいたします。
投稿: りいちろ | 2007/04/15 23:10