フラガール 松雪泰子が演じるプロの凛々しさ
「フラガール」を観ました
豊かな映画です。
何度も泣かされましたし、本当にときめいたし・・・。
なによりも松雪泰子の演じる先生役のダンサー、
プロ根性のようなものが
理屈ぬきによかった。
李監督は彼女の強さと中にある柔らかさを
本当に見事に引き出したと思います
彼女のプロとしての厳しさが次第にダンサー達に伝わっていく部分、
同時に彼女の人間としての柔らかさが次第に滲み出してくる部分
そのバランスが本当に絶妙で、
だからシーンごとに涙が溢れてきた
キャスティングの勝利ともいえるかもしれません
まず、都会的な美しさを持ち
意思の強さのようなものがしっかりと表現でき
なおかつ心をゆっくり開いていく必然について
演技ができないと松雪の役は務まらない・・・
最初、酔っ払ってどうしようもない先生が
戸惑う生徒達をしっかりとフラダンスに導くのが
踊り・・・
そのときの松雪のしなやかな動きには
本当に説得力がありました
踊り子の一人が常磐を去るときの
松雪のすねたような態度
そしていよいよ引越しの車が動き出す直前の
彼女の抱擁・・・
まるで彼女の抱擁の力が見るもの伝わってくるような演技
さらにはとある事情から
彼女が一旦常磐を去ろうとし
列車の席で教え子が追いかけてきたのを見て
「格好悪い」ってつぶやく時の歯切れ
教え子から逃げるように別の席に移って
凍えた猫のように縮こまる時の憂いの表情
生徒達のフラのメッセージに心を動かされるとき
見せる彼女の心のなかの柔らかさの演技・・・
そして、心を変えて再度ホームに立つ時の彼女の表情・・・
一つ一つがしっかりと観客の心と共鳴していきます
彼女が教え子たちをプロだと認めるに足りる事件があって
その結果の出来事という設定なのですが
そこで自分の居場所も常磐にあることを発見した
彼女の表情のなんと深いこと
少しの照れと安堵と喜びと覚悟と・・・
そしてその感情を生徒達と共有していく・・・
まるでいくつもの心が共鳴するようなhシーン
共鳴は観客に涙を運んできて・・・
少なくとも私は、劇場が暗くなければどうしようもないほど
涙を絞られてしまいました
ほかの役者も本当によい演技をしましたしね・・・
蒼井優の富司演じる母親との確執、
その母親を説得するのも松雪と同じようにプロの踊り・・・
切れのよさがそのまま物語の説得力になっていて・・・
静ちゃんの演技も単純にその場面というだけでなく
彼女の背負っているものがしっかり浮かび上がっていて
秀逸だったと思います
最後のフラのシーンも本当にしっかりと作られていました
迫力も十分だったし、蒼井優が一番最初に松雪泰子にあこがれる
きっかけとなった振り付けで踊るとき
会場の歓声やスローモーションが見事に配されて・・・
生で見たらそれはすごいものだったと思います
人間が厳しい修練を重ねて得た技っていうのは
人を動かすのです
本当にわくわくする・・・
ステージが始まる前に
「私も一緒に踊りたい」といった松雪の芝居がここでも生きていて・・
プロがプロを認めたってことですから・・・
松雪もしびれるようにかっこよかったし
ダンサー達の緊張感や自信のようなものも鮮やかに浮かび上がってきて・・・
それにもしびれた
こんなに満ち足りて、しかも涙が出た映画ってここ数年なかったような気がします
「スウィングガール」の最後のSingSingSingも
達成感に満ちたエンディングでしたが
物語のスケール自体は
フラガール」の方が上かも・・・
ただ、どちらがよいか悪いかという優劣はつけにくいですね
満たされた時代の「スウィングガール」と
生活に迫られての「フラガール」
という違いはあるにしても
何かを成し遂げるということの感動には
変わりがないから・・・
いずれにしても、こういう感動を表現できる日本映画を見ていると
ここ数年でまたひとつ力をつけたなと感じるのです
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