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上級の感動は総合力(トニー賞と医龍)

先週土曜日にトニー賞の授賞式(再放送)をテレビで見て
実はけっこうはまっています。

ああいうのって見ているだけでわくわくしますよね
特にブロードウェイからみて地球の裏側に位置する場所で
生活している身にとっては・・・
画面の向こう側からその息吹のようなものが
伝わってきますものね・・・
作品賞をとった「Jersey Boys」の見せ方・・・
シンプルなバンドで歌い切る「君の瞳に恋してる」自体がけっこう魅力的で
(声がすばらしく良い)
しかもそのあとブラスが入って、ボーカルが4人になって,バックダンサーがついて・・
そう、4人がかっこいいんですよねぇ・・・
ちょっとしたしぐさがむちゃくちゃ切れている
本当のキレって大仰なものでなくさりげないものだということが
テレビを通してでも十分に伝わってきます
あれは観たくなります

「パジャマゲーム」も魅力的でしたね
もう終わってしまったそうだけれど・・・
あの振り付けもけっこう凄かったですね
集団の作り方とかにもスピードや力があって・・・

「三文オペラ」のシンディローパーも
凄く良い味を出していた
一種退廃的なのに熱いものを内包しているような
雰囲気が彼女から出てまるで幻想のように
劇場全体に染み込んでいく
テレビの画面からでもそれが十分にわかる
小さなしぐさ、衣装、声の出し方・・・
完璧に作られた空間だからこちらにまで伝わってくる

こうしてみていると舞台というものが
いかにいろんな力の総合なのかということが
よくわかります
ブロードウェイの役者たちですから
あたりまえのように強力な表現力や体の動きという武器をもち
観客を魅了するのですが
それをぎりぎりの発想で組み合わせて
さらに重ねていかないと良い舞台にはならない
逆にその重なり方がうまくいったとき、
ひとつだけでもものすごいパワーが
累乗のようになってとてつもない力がそこに生まれる・・・
ましてや
トニー賞のプレゼンは最初からトニー賞授賞式の持つ魔力のようなものが
個々の作品のパワーに上乗せされていて
トニー賞を借景にしてパワーをさらに倍増させているのだから
テレビで録画を観るものすら圧倒されるのも
ある意味当然のことなのかもしれません。

そう、フロードウェイで当てるためには、一点豪華主義ではだめだっていうのが
ブロードウェイ自身の凄いところですよねぇ
昔々ブロードウェイで見た「GRIND」はハロルド・プリンスのミュージカルで
なおかつベン・ヴェーリンが出ていたのにあっという間につぶれたし
Bob Fosseの最後のミュージカル、「Big Deal」も
本当にぞくっとくるようなダンスに3回も続けて見に行って
4回目は終わる一週間前だった。
あのなかのダンスは、本当にすごかったですけれどね・・・
もう2度と再演はできないだろうし・・・
(あのダンスの振り付け・指導はBob Fosseしかできないだろうから・・・)
でも、やっぱりミュージカルは総合力、
なにか特別な魅力があっても
それだけでロングランを支えていくことはできないのでしょうね。
逆に当時のことでいえば、
しっかりとした総合力があったからこそ、
危ないといわれた「Singin’ in the rain」などが
昔、それなりにロングランをできたのだと思います
いつの話しかって?まあまあ、無粋な・・・(笑)
Bob Fosseがなくなるほんの2年前のお話ですけれど・・・

テレビドラマの医龍の最終回をみていて
大満足だったのですが
あれもある意味いろんな総合力の勝利ですよね
手術のシーンも良くできていたけれどそれだけじゃない
岸部一徳の怪演だけでも支えられるものではない
手術が終わって拍手の中をバチスタ手術チームが通り抜けていくシーンが
あるじゃないですか
そこまでの緊張感をしっかりと視聴者に伝えて
空気をぎりぎりまで圧縮しておいて
一瞬の沈黙のあと
夏木マリの拍手をきっかけに一気にはじけさせる
ああいう仕掛け、
さらには階段の使い方、ちょっと臭いせりふ
ある意味みえみえだけれど
世界がしっかりできているから
臭さが味に変わったりもして・・・
さまざまな要素や工夫がまるで化学反応のように広がって
個々のしっかりと機能してはじめて生まれてくるなにかがある
最終回の圧倒的な感動には
物語の展開など基本的な部分で
感動の種が無理なく撒かれていたことが大きいのでしょうが
稲森いずみの繊細な感情表現と坂口憲二の骨太さ
小池鉄平や佐々木蔵ノ介や安部サダオの色で
しっかりと織り上げた世界があるから
その種まきができたともいえるような・・・
あのレベルまで行くと視聴者も作り物に
しっかりと身をゆだねることができますものね・・・
舞台とはちがう種類の演技力なのでしょうけれど
彼らに画面の中まで引きずりこまれたような・・・
要は演技力だけでもなく、ドラマの構成だけでもなく
一つ一つがクオリティを持った要素で築かれたからこそ
得られた勝利なのだと思います

上級の感動というのは総合力でありながら
個々の力から生まれてくる

多分、そんな話なのでしょうね・・・

まあ、すごいといえばHEROの中で
間と表情でしっかり演技をしていた中井貴一もすごかったけれど・・・
あの演技が浮かないだけの力がドラマ全体にありましたものね

世間は梅雨の真っ盛りだけれど
これだけいいものをお茶の間(死語?)で観られるなんて
テレビの総合力って
侮ってはいけないということなのかもしれませんね

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