やじきたに隠れたもろもろもろ
真夜中の弥次さん喜多さんのDVDを衝動買いしてしまいました
お弁当箱入りのスペシャルバージョン・・・
映画館で見たかったのですが機会を逸して
でも、いろいろ評判は聞いていたので飛びついてしまいました。
結論からいうと非常に良く出来た映画でしてね・・・
一見ハチャメチャな物語なのですが
その裏にしっかりとした価値観が宿っている
逆かな・・・?
しっかりとした価値観や視点を持って作られているから
ハチャメチャをやっても作品の中身が離散することなく
むしろ色とりどりに作品を飾っている感じになっている
出演者も守備範囲のひろい芸達者ばかりですから、
来たボールを自分のストライクゾーンにする力は持っていて
それぞれの領域でしっかりと芝居をしているのですが
冷静に考えるとストライクゾーンにボールを投げているというか
役者が物語から逸脱することなく
自分の個性を十分に引き出してもらって
きちんと作品の幹や枝で花を咲かせていられるのは
一方では宮藤官九郎の力なのだろうなと思います
主演の二人も本当に熱演で
しっかりと入り込んだ演技はきちんと観客に伝わってくる
長瀬智也演ずる弥次さんの
生死に対する価値観や人を想う気持ち
実はとてもシリアスなベースに
実感のない時の流れをドラックで埋めて生きる
中村七之助演じる喜多さん
その接点と係わり合いのなかから見えてくる危うさと普遍性のアラベスク
こういうのって常人ではなかなか表現できない世界だと思うのですが
でも彼らの演技が宮藤官九郎の感性を通すと
まるで魔法のように浮き出してくる感覚が実態としてそこに見える
なんというか・・・
たとえば透き通った底なし沼でギャグマンガを読むような
不思議な感覚に観客を沈めてれます
そうそう、なかでも小池栄子の演技がよくてねぇ・・・
彼女の印象がこの映画でずいぶんと変わりました
思いつめた時の鋼のような強さとしなやかさの表現に
揺るぎがないというかものすごい説得力があるというか・・・
しかも鎧の下の包容力のようなものがきちっと伝わってきて、
彼女の演技がなければ長瀬の演技は報われなかったと思います
板尾創路の鉛を抱えたような軽さも印象に残ります
当時勘九郎、すなわち当代勘三郎の貫禄たっぷりの軽妙な演技もご愛嬌だし
妻夫木聡のレオナルド・デュカプリオのような明るさもいい
特典映像のメイキングで役者さんやスタッフが声をそろえて宮藤の感性を
褒めていましたが
なんというか人間の根源をなすロジックの表現方法について
間違いなく彼にしか出来ないものがあることを
私もこのDVDから痛感しました
「鈍獣」のときにも感じた匂いですけれど
何かをゆるく放置するように許してしまうような感覚のようなものは
やっぱり彼だから表現できたのだろうなと思います
まあ、これって見るほうも、多分やるほうも
結構パワーがいるのですが
やっぱり天才の部類なのでしょうね・・・
しかも才を自由にストレートに飛ばすのではなく、
けっこう自分で仕掛けた不自由さのなかで
開花させるような・・・
人によって好き嫌いのはっきり出る映画だとは思うのですが
私はとても気に入ったし
ぶつかってくる感性に立ち向かうだけの腕と覚えのある方にとっては
一度ご覧いただく価値のある映画だと思います
一応、お勧めということで
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