The Producers
現在、東京に来ているThe Producers(東京厚生年金会館にて24日まで)は
超おすすめです。
ブロードウェイでも先月見たのですが、日本で見てもやっぱりすごい
するめのように見ても観ても味の出てくる作品です。
まあ、癖はつよいのですけれどねぇ・・・
きちんとブロードウェイの伝統的な形式を踏襲しながら
やりたい放題やっている感じ・・・
そのどたばたぶりは「8時だよ、全員集合!」を彷彿させるところすらある・・・
ただ、それでもしっかりと観客の興味を維持できているのは
発想がユニークでバランスがよいから・・・
見せ場がてんこ盛りなのです
オープニングからして
アイデアに満ち溢れていて・・・
「Opening Night」がいきなり「Closing Night」になるのですから
けっこうタフな話でもあるのですが
それを群集のコーラスでまとめ切ってしまう
評論的に行ってしまえばスーザン ストローマンの才のなせる業なのでしょうが・・・
オーソドックスな動きをしっかりと積み重ねる中で
斬新な風景をしっかりと導き出しているところに
彼女の才を感じます
いきなり観客は物語に引き入れられてしまいますものね・・・
おばあさんが露骨にHだったり会計士が幼児性の依存症(物への)だったり・・
その辺もすごい話なのですが、そのなかからひねり出されるものは
さらにすごい
すごいけれど筋がちゃんと通っていて
なおかつぎりぎりところで寸止めがなされている・・・
そのあたりのきわどいセンスが他のミュージカルより
一歩踏み込まれている感じがします
かくれナチ主義者の男に絶対当たらないであろう「ヒットラーの春」の契約をする場面でも
鍵十字の腕章をつけさせながら、ナチズムの匂い自体はしっかり処理されていたり
(鳩の振付もよかったし、場をシリアスにしないためのうまい演出でもあった)
演出家に契約を取りに行くときにもオカマ屋敷の雰囲気が非常にうまくコントロールされていて
ブロードウェイの中にある一種の女性的な部分がしっかり誇張されていた
要はある種のパロディ感覚だとおもうのですよ・・・
社会的にちょっとタブーっぽいことをスパイスに物語を見事にふくらませている
将棋くずしのここまで大丈夫という線をしっかりまもりながら
いろんなパーツを事象から取ってきては物語に縫いこんでいるような感じ・・・・
しかも個々のシーンを背負う役者は一流どころですから。
主役級はワールドツアーとはいえ貫禄も腕も間違いない
有名なおばあさんたちの歩行器ダンスにしても
スウェーデン女性のお色気たっぷりのダンスや歌声も
全体のなかに浮くことなくしっかりおさまっているのは
ほかのアイデアがそれらをOne Of Themにするほど
溢れかえっているからにほかなりません
Ullaさんの歌はたぶんBroadwayの同役より上かと思
動きにも切れがあるし・・・
彼女を見ているだけでけっこう幸せになります
後半になってくるとアイデアはさらに膨らんでいきます
客を楽しませるためならなんでもやるというか・・・
ここまでやるかというか・・・
そりゃすごいものです
吉本新喜劇なみにとことんまで客を楽しませる仕掛けに満ち溢れている
しかもそれらが浮くことなくきちんと物語に組み込まれているのです
なんというかブロードウェイで見たときには
細かい部分で理解できないことがそれなりにあったのですが
日本語訳があるとさらに味わいぶかく感じたことがたくさんあります
大体、
①楽屋ものである
②笑える
③女性の衣装が華やかである
④タップダンスが入っている
⑤よい話がきちんと入っている
とそれだけで当たるミュージカルが多いそうですが
これはそれらをすべて満たしていますものね・・・
まあ、百聞は一見にしかずて
公演日は残り少ないですが
観て決して損はないし、何か自分のなかに
ちょっとした幸せ感が訪れる作品です
ところで、ちょっと余談ですが
東京厚生会館の前のコンビニで
スタバーのマンゴーフラペチーノをすすりながら
開演を待っていたら、
真っ白の服に白いパンツ姿の銀髪の女性がこちらに歩いてくるのです
容姿もそうなのですがその姿勢の美しさと気品に思わず見とれてしまい
きっと「The Producers」の役者さんだとおもって姿を追いかけてしまったのですが
(コンビニに入って桃の氷を買われていらっしゃいました)
あとで舞台を見たら、その方はUlla役のMs. Ida Leigh Cutisでありました。
舞台の上も美しく、その歌や踊りはまさに大向こうを唸らせるに十分の貫禄でしたが
でも失礼ながら素の彼女も本当に美しかった
理屈ぬきに美しいというのは、あんまりないですものね・・・
思わず素直に感動してしまいました
まあ、美しい人が鍛え抜かれた演技で美しい役をするのですから
そりゃすごいものが出来るわけです
公演はそんなにたくさんないのだろうけれど・・・・
もしチャンスがあれば是非お勧めです
S席の13000円の元は十分取れるはずです
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