蛇と早春の比較論(二つのお芝居の感想、番外編)ねたばれもあります
この3連休にふたつのお芝居をみました。
ひとつはスパイラルホールの松尾スズキさんのお芝居、
もうひとつは三鷹芸術文化Cの早春ヤングメンというお芝居です。
面白かったかといえば、両方とも面白かった
「蛇よ!」は2人芝居にありがちな甘さがほとんどなく
良く練られた作品でした
松尾スズキの演技力って大竹しのぶと十分渡り合えるほどなのねなどと
妙な感動のおまけまでついて・・・
笑いに笑ったけれど本当はけっこうやるせなく重い話なのかもと
帰り道にじわっときたり・・・
あの幕間の映画って、松尾や大竹の世代(私も人のことはいえないけれど)にとっては
一種の現風景なのだと思います。
そして現風景の先にお芝居の内容がある感じ・・・
使い込んだお金を使い果たしても
狂気がそばにたむろしても
精子のころから流れのままでも
人を刺しても
劇的に終わらずにぐだぐだと続く物語・・・
笑いすぎた後に、ふっと
行き場のなさへの虚無感にとどくちょっと前に
中途半端なやるせなさがやってくるという
まあ、松尾一流の屈折した趣向がたまらないというか
くせになるというか・・・
とにかく二人の役者の表現は緩急自在、
物語にも斬新な展開が随所に見られ
無茶をやっていても無理がない
そして深く観客を包み込むような演技のゆとりのすごさ
冷静に考えると
彼らの演技がないと下卑な内容にもなりかねない台本なのですが
彼らの表現力はそこに深さと本来物語が含んでいるものを
しっかりと膨らませて観客に与えてくれる
まあ、常人には真似のできない舞台でありました
客席に中村獅童さんがいらっしゃったような・・・
それもうなずける作品ではありました。
一方「早春ヤングメン」は若い役者さんが多く出演している芝居です。
そりゃあ大竹しのぶさんの翌日にみると
個々の役者の演技もどこか弱さがあったり不安定だったりはするし
押して表現していくような部分がどうしても目につきます
でも、結論から言うと、私の中でどちらが面白かったかという勝負は
100対98くらいで「早春ヤングメン」の勝ちかもしれない
少なくとも、役者さんたちが舞台を支えることはあっても
舞台を滞らせる部分はひとつもなかったし
町田マリーやブルースカイといった十分実績のある役者さんが
枠を越える演技が必要な部分を支えたという部分も
その分他の役者さんは背伸びのない演技をしていたような・・・
で、その演技の小さな真摯さに心惹かれる部分がとてもたくさんあるのです。
数多い出演者全員にそういう観客のこころを
ふっとつかむような演技があったといっても過言ではない・・・
たとえば、ひとつの集団を離れる演技がみんなよかったり・・・
演劇部を抜けるときの清田ゆきさんのしぐさや間の取り方
劇団ブルドックを離れるときの後藤飛鳥さんの
町田マリーさんのせりふを待つ表情・・・
そういう、細かい部分で良い芝居の積み重ねが
観客から2時間40分という時間の感覚を奪い
舞台上の時間と観客席の時間を一つにしていった気がします
昔、双数姉妹の「やや無情・・・」という芝居を見に行ったとき
大倉マヤさんが最初に舞台となる部分のいすの並び方を点検するシーンがあって
その演技が最後の大きな感動をよぶ糸の結び目になったことがあります
(と、その芝居を見たとき私はそう感じた)
それとおんなじで
ちいさくとも良い芝居をされると観客って無意識にその先に目を向けますよね
見終わってから気づくことなのですが
そういう観客に前を向かせるようなひっかかりが
この芝居には数多くあって・・・
良いお芝居というのは一発芸のようなものではなく
小さくともしっかりした仕事が積み重なったときに
成立するものかもしれないと、素人ながらに感じたことでした
細かい劇評はR-Clubをご覧いただきたいのですが
村上大樹さんは本当によい仕事をしたと思います
まだ、27日などにも公演がのこっているお芝居なので
三鷹詣をするお時間のあるかたには是非おすすめです
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