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鴻上氏の抗議について外野から

鴻上尚史氏のリンダリンダは
かなり評価が分かれているようですね
演劇のページなどを見ても
無星から★★★★(満点)までさまざまな感想を持たれた
観客がいらっしゃるみたいで・・・
見にいけない私にはちょっと残念感が広がっています

ところでこの芝居の劇評が朝日新聞に出たのですが(今月初旬)
鴻上氏がこれに噛み付いて大きな話題になっています
HPや上演中の劇場の壁に抗議文を掲示したとのこと・・・

朝日新聞の劇評は私も読んだのですが
まあ、鴻上氏が怒るほどではないにせよ
陳腐であまりぱっとしない批評ではありました
私は鴻上氏の芝居(リンダリンダ)を見ていないし
時々恥をかなぐりすてて劇評みたいなものを
自分のHPに掲載したりしてますから
あまりえらそうなことはいえないのですが
なんというかぬるくて批評するという情熱に薄い
劇評だったような印象があります

そもそも、批評というのは
対象となるものの質を問うという側面もありますが
批評を形成する前提としては
何を感じたかという批評者の感性が
ベースにあるはずで
それを公にした段階で批評をした人間の資質が
同時に問われるものだと思います
また、忘れてちゃいけないことは
批評という行為の全体のスキームには
批評の対象となる作品を作る側と批評する側が
それぞれの品質を問うことだけではなく
常に双方の感性から生まれたものを受け入れる
第三者が存在するという点です
この第三者が存在しない表現や批評は自己満足と呼ばるでしょうし
また第三者を除いた当事者のみで批評が交差する場合には
双方によほど客観的に物を判断する能力がない限り
ただの小学生の口げんかになってしまいます

もし、鴻上氏の批評に対する抗議が人の心を十分にゆさぶるほど
すばらしいものであれば
それはそれで「ソクラテスの弁明」のように
歴史に残るのでしょうが
今回の鴻上氏の文章を読む限り
そこに存在するのは
やっぱり小学生の口げんかのほうであるような気がして
なりません
また、(鴻上氏の抗議を読む限り鴻上氏には)朝日新聞の記事が
実際に芝居を見た第三者にどのように受け取られるかという
考察が十分でないような気もします

ひとつ悲しいこと
いつから鴻上氏は自分が舞台上に築き上げたものを解説し
自分の表現を弁護するようになったのでしょうか?
芝居のクオリティは劇場の空間の中にこそ存在し
その価値は観客の心にこそ輝くべきものであることを
鴻上氏が知らないはずはないのに・・・

もし、「リンダリンダ」が
しっかりと観客に対してなにかを与えているのなら
鴻上氏はただ観客を信じていればよいのだし
信じるべきなのです
たとえ朝日新聞の劇評が悪意に満ちたものであったとしても
実際に見た観客が自分の感覚と比較して感じたことに
勝てるはずもなく
また掲載された批評によって資質を問われるのは
鴻上氏の作品ではなく、その批評の執筆者であることを
鴻上氏ともあろう方がわからないはずがないと思うのですが・・・

さらにもうひとつ言えば、
HPや劇場に掲げられた抗議の文章は、ある意味ネタバレといわれる
タブーに抵触していることに
鴻上氏は気づいていらっしゃるのでしょうか?
そして劇場で感動をもらった観客達にとって
この文章が鴻上氏との連帯感を阻害する結果をもたらす
リスクについて鴻上氏はどう思われているのでしょうか

鴻上氏自身が書かれているように
昔、彼は批判に対して作品で立ち向かうという姿勢で
一貫していました
そのスタンスが崩れるというのは
彼の表現が十分観客を満たしていないことに対する
苛立ちのようにも感じます

きちんとしたクオリティの作品を作ったあとは
もっとゆったりしていれば良いのですよ。
ね、鴻上さん。


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コメント

りいちろ様、はじめまして。
読みながら何度も頷きまくってしまいました。
TBさせていただいています。

「掲載された批評によって資質を問われるのは
鴻上氏の作品ではなく、その批評の執筆者である」

まったくその通りですね。
鴻上さんだってそんなこと、充分ご承知のことだろうに・・・。
りいちろさんの言われるように、最近の鴻上さんからはある種苛立ちが感じられてしまいます。
やはり少し悲しい思いを抑え切れません。

投稿: ぴーと | 2004/12/16 14:38

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» [雑談]劇評と観客 [stage note archives]
KOKAMI@network vol.6「リンダ・リンダ」の東京公演の会場で、鴻上さんが朝日新聞の劇評に抗議する壁新聞を貼りだしたそうだ。そうだ、というのは私... [続きを読む]

受信: 2004/12/16 14:30

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