中井貴一さんの芸力
今、青山円型劇場で上演されている
「バナナがすきな人」はちょっと贅沢なお芝居です
(詳しくは
R-Club本館をご参照下さい。ただしネタばれありですのでご了承下さい)
なによりも中井貴一の演技に含まれるちょっとした芸の部分がすごくて
それだけでも入場料の元は十分にとれます
たとえば、バナナの叩き売りの口上、さらっと流すだけなのですが
そこにあるメリハリは彼の役柄での嘘を十分にカバーしてしまうだけの
技と気迫を持っているのです。
彼が口上を述べると舞台上には華が生まれます
かれの語りには、人の心を絡めとるなにかがある・・・
また彼は橋幸夫の歌を歌うのですが
その姿にも人をしっかりとひきつけるものがあって・・・
DCカードのたぬき・かっぱとの絡みも
彼の演技を見ていると
さもありなんと思ってしまいます
人にはいろんな芸があって
たとえば共演している酒井敏也さんには
彼の世界をうつす雰囲気や
芸があり、これもすばらしいわけですが
中井貴一さんの演技にはさらに芸を超えてはじけた何かがあるような気がします
それは酒井さんが劣っているということではなく色が違うという意味で・・・。
単純なストレートプレイとしての演技では酒井さんのすごさというか
劇中の言葉を借りれば超一流であることを
今回十分に再認識させられたのですが・・・
酒井さんの演技がゆっくりとつつみこむように観客を取り込んでいくのに対して
中井さんの演技はまっすぐに観客の興味を自分にもってくる力というか
バンテリンのような即効性がある・・・
共演のいしのようこさんは逆のパワーが潜んでいて
でも酒井さんとすこし違ったりします
押さえ気味の演技の中に含まれる
彼女自身の内面に関する表現のようなものが
カプセルのように観客にとりこまれて
次のシーンでカプセルが溶けて大きく花開いていくような感じ・・・
彼女について観劇前には
志村けんとコントの演技をしているすがたしか思い浮かべられなくて
けっこう大きな役をもらっていることに驚きもしたのですが
終わってみれば演技力にたいしてはそれでも役不足というか
基本的には内面にあるものが絞らなくてもきちんと出せる人だと感じました
いずれにしても、何かで人をきちんとひきつける演技というのは
結構難しいとおもうし、
それだけに演劇ではそういう役者が集まると
時々とんでもなく贅沢なものができるということでしょうか・・・
(作者や演出に恵まれないとそれでもこけるのが
また演劇の面白いところではあるのですが・・・)
中井貴一さんをはじめ名のとおった人間というのは
やっぱりすごいものを持っているもんだと
あたりまえの関心をしたことでした
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